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〈第90回全国高校ラグビー〉 「朝高史上最強」チームの進撃

FW、BK一体の攻撃

 「朝高史上最強」とうたわれた今年の大阪朝高ラグビー部。「第90回全国高等学校ラグビーフットボール大会」では、同胞たちの大きな期待を背負い、エースプレーヤーの負傷というアクシデントに見舞われながらも、目に見えないプレッシャーを跳ね除け、ベスト4へと突き進んだ。

エースの負傷

16点差から意地の追い上げを見せた準決勝。対桐蔭学園(神奈川第2)、10−21

 昨年4月末の「サニックス2010ワールドラグビーユース交流大会」で右足に大けがを負った主将の金寛泰選手が、「全国大会」初戦となった2回戦(12月30日)途中から、約8カ月ぶりに公式戦に出場した。チームの精神的支柱で、呉英吉監督からの信頼も厚い主将の復帰。チームは初の「全国制覇」に向けて順調な滑り出しを切ったかに見えた。

 予想外のアクシデントが起きたのは、その試合の後半25分だった。相手選手との接触で、トライゲッターの右CTB・権裕人選手(3年)が途中交代。脳震とうと診断され、大会規定により今大会の出場が不可能になった。

主将の復帰などもあり快勝した初戦。対福岡(福岡第2)、48−12

 続く尾道戦、実力的に上回る大阪朝高が思うように攻め込めない。相手フォワードに押し込まれる場面が目立ち、薄氷を踏むような試合となったが、勝利の糸を手繰り寄せたのは、「裕人の分まで」という強い思いだった。

 この試合で大阪朝高のファーストトライを決めた金尚浩選手(3年、WTB)は、「出られない裕人の分を気持ちでカバーし合えたし、団結力も増した」と次戦を見据えた。

 Aシード対決となった準々決勝。重量級フォワードで押してくる流経大柏を相手に、大阪朝高は本来の形であるフォワードとバックスが一体となった攻撃を仕掛けた。

相手FWの攻撃に苦しめられたが、辛くも逆転勝ちした3回戦。対尾道(広島)、12−7

 逆転に成功後、同点に追いつかれ迎えた後半10分、ゴール前5メートルのラックからパスを受けた南宗成選手(3年、LO)がトライ。試合の主導権を握ると15分、29分にも南選手がトライを奪い、会心の勝利で前回大会と同じ舞台に駒を進めた。

 この日、応援スタンドには京都府青商会が大阪朝高を応援するために作った横断幕が初めて掲げられた。金勇輝選手(3年、CTB)は「同胞たちや朝高生たちの応援が力になった。特に京都府青商会の「이루자 60만동포의 소원(成し遂げよう! 60万同胞の願い)」という横断幕を見たときは(うれしさで)身震いした。自分たちはやはり多くのものを背負いながら戦っているんだとあらためて感じた」と話した。

まさかの幕切れ

持ち味を発揮し、Aシード校対決を制した準々決勝。対流経大柏(千葉)、32−10

 準々決勝終了後に行われた抽選の結果、準決勝の対戦相手が桐蔭に決まると、呉英吉監督はガッツポーズを見せた。前回大会準決勝で7―33と完敗した相手に雪辱を果たすチャンスが訪れたからだ。

 初の決勝進出をかけて臨んだ準決勝では、序盤から攻め込まれ16点のビハインドを背負った。それでも前半終了間際の31分に相手ゴール前でモールを組んで押し込み、鄭宏基選手(3年、FL)がトライをねじ込み逆転に望みをつなぐと、後半16分にはゴール中央40メートルから朴成基選手が(3年、SO)がペナルティゴールを成功させ、10―16とした。

 ワントライ、ワンゴールで逆転できる点差で迎えた26分。大阪朝高が相手陣内深くまで攻め立てゴール前5メートルでペナルティを誘うと、リスタートからボールを右に展開。逆転につながるトライが目の前に迫っていた。

溢れる涙をこらえながらも胸を張って臨んだ表彰式

 しかし相手の鋭いタックルに朝高選手がボールを落とし、それを拾った相手選手が朝高ゴールまでの100メートルを走りきり、試合を決定づけるトライを奪った。

 試合後、朝高選手たちはピッチ上で泣き崩れることなく、最後まで堂々と胸を張って溢れる涙をこらえていた。

 初戦でのアクシデントで試合に出場できなかった権裕人選手は、「朝高での3年間、最高のチームメイトに囲まれて本当に楽しかった。後輩たちには、僕たちの借りを返してくれと伝えた」と声を詰まらせながらも笑顔で応えた。

 前回大会準決勝からちょうど1年。当時のメンバーを数多くそろえ、初の「全国制覇」を目指して臨んだ彼らの挑戦は終わった。しかし「一つ、信頼、勝利(하나 믿음 승리)」のスローガンを掲げ、伝統の低くて鋭いタックルを武器に、2年連続でベスト4に進出した快挙は、同胞たちに大きな感動を与えた。( 記事・鄭茂憲、写真・琴基徹)

[朝鮮新報 2011.1.11]