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〈朝鮮仏教と私たち−1〉 祖国を守る

民衆の信仰心と共に

豊臣秀吉の侵略戦争から祖国を守った西山大師ゆかりの妙香山の金剛窟庵(撮影・文光善)

 朝鮮に初めて仏教が伝えられ公認されたのは高句麗小獣林王2(372)年のことだ。それから仏教は1700年にわたって朝鮮民族の生活文化に根差し、自然崇拝の信仰から人間本来の価値と自我に目覚める精神世界に一大変化を起こした。三国時代と高麗時代を通して隆盛を極めた仏教は、朝鮮王朝時代の迫害と日本の植民地統治を乗り越え現代につながっている。

 新羅時代を代表する名僧元暁と義湘が唱えた仏教は、高麗時代の義天により天台仏教に発展し、普照国師知訥により禅と教学が通じ合い禅を中心に調和をなしながら独特な形で発展してきた。

 高麗中期、1011年モンゴルの相次ぐ侵入により民衆の生活は苦しかったが、侵略者に抵抗する戦いの中で海印寺に残る「八萬大蔵経」の版木を彫りながら戦った。世界文化遺産にも指定された「八萬大蔵経」の製作はほかに例を見ない民衆の信仰心の表れでもあり、民族の尊厳を回復する作業でもあった。

 朝鮮王朝時代、仏教は抑圧され僧侶たちは首都・漢城の中に出入りすることすら許されなかったが、西山大師・休静、泗・大師・惟政をはじめとする僧侶たちは、僧兵を組織し、豊臣秀吉の侵略戦争から国と民を護るため果敢な戦いを繰り広げた。仏教は護国仏教でもあり生活仏教でもあった。現代では西洋文明のもたらした自然破壊から環境を守り、人々の苦悩をやわらげる役割を果たしている。

 朝鮮のどこに行ってもお寺がある。山寺に身を寄せるとどこからか聞こえてくる鐘と読経の音、その独特なリズムを耳にすると何となくこころが落ち着いてくる。お寺の食べ物や僧侶たちの服飾文化なども現代では注目されている。(洪南基・朝鮮奨学会監事)

[朝鮮新報 2011.5.16]