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東北初中校長と埼玉の同胞商工人 「人々の支えを糧に」

固い握手を交わした校長と朴さん(左)

 東日本大震災で甚大な被害に遭った東北朝鮮初中級学校。校舎は大きく横揺れし、窓ガラスは割れ、文房具などあらゆる物が崩れ落ち、まさに崩壊状態となった。4月12日に入学式を迎え新学期が始まったが、いまだ校舎は使用されていない。寄宿舎を教室に、黒板はホワイトボードを代用して授業を行っている。

 毎日のようにテレビや新聞で報道される被災地の人々の姿、地震や津波に遭った町の被害の爪痕。その悲惨な状況に心を痛めた埼玉・北部商工会の元会長である浴u仁修」の朴仁作代表取締役は、少しでも同胞たちの力になりたいという思いから東北初中を支援した。

 震災から約2カ月、日本各地から送られてくる救援物資や同胞救援隊による炊き出し、励ましの連絡など、被災地に向けた同胞たちの数え切れないほどの温かい支援は毎日のように届いている。今回の朴さんからの連絡もその一つだった。

 その感謝の思いを直接伝えようと4月22日、同校の尹鐘哲校長が埼玉県熊谷市に住む朴さんを訪れた。

 同胞社会の拠点であり、民族の宝であるウリハッキョを守らなくてはいけないと日頃から口にしていた朴さん。「少ないかもしれないが学校のために有用してほしい」と快く寄付した。

 連絡を受けた後に初めて朴さんと対面した尹校長は、「落ち込んでいる場合ではないと、自分自身を奮い立たせることができた。温かい心遣いに感謝している」との思いを伝え、震災から今日までの学校や同胞たちの状況について話した。

 「とりあえず今は学校の復旧が最優先」と話した尹校長。「入学式の日に結成された宮城県の『復旧委員会』を中心に、一日でも早く学校を復旧させ、かつて以上の活気を取り戻したい。この期間大変なことも多かったが、それでも春は来る。これからもめげずにがんばっていきたい」と話した。

 また、今回の震災で失ったものは多かったが得たものも多かったとふり返り、「普段はあまり姿を見せない卒業生たちや多くの人々と出会うことができた。その一つひとつの縁が心の励みになっている。多くの支えを糧に一歩ずつ前に進んでいきたい」と力強く語った。

 朴代表は、「遠いところからよくわざわざ立ち寄ってくれた」と尹校長を労いながら、「自分たちは当事者ではないから声をかけたり物資を送ることでしか協力できないが、校長の苦労は身に沁みて感じている。生きていればなんとかなる。私たちも、今日で終わりでなくこれからも支援を続けていきたい」と励ました。

 別れ際、「応援しているのは決して自分一人だけではない。他にもたくさんいることを忘れず、心強くいてほしい」という朴さんの言葉をかみ締めながら固い握手を交わし、尹校長は帰路へとついた。(尹梨奈)

[朝鮮新報 2011.5.13]