top_rogo.gif (16396 bytes)

ソウルで出版された「幸せな統一の話」を読む

北への道 開く日のために

1000円、問い合わせ=コリアブックセンター、TEL 03・6820・0111)

 3月末、ソウルで「幸せな統一の話」(原題=행복한 통일이야기)が出版された。

 著者は、北南と海外同胞が共に創る統一問題専門月刊誌「民族21」の編集主幹・安英民氏である。

 「民族21」は北南共同宣言が発表された2000年の翌年4月に創刊された。文字どおり6.15の申し子である。初代発行人は姜萬吉氏、現発行人は明盡師である。在日同胞の中にも愛読者が多数いるが、そんな彼らが誰よりも創刊10周年を喜んでいるだろ。

 安英民氏は慶尚北道大邱市生まれ。中高校はソウル。1987年慶北大学数学科に入学後、91年慶北大総学生会長、大邱・慶北地域大学総学生会連合議長を歴任した。そのため20代は繰り返し指名手配・投獄された。実父で世界的な数学者である安在鳩氏と同じ獄につながれたこともある。98年、月間「マル」誌で記者生活に入り01年、「民族21」創刊に参与し今日に至っている。両誌あわせて14年目。2000年8月の初訪朝後20数回、朝鮮民主主義人民共和国を取材した北南関係専門記者である。著書に「アボジ、あなたは泰山です」「行動する良心」などがある。

 著者は初出勤の日、デスクに座って10年後に「民族21」平壌支局の特派員として北の大地を闊歩する自分の姿を思い描いていた。ところが夢は儚く破れ、今は、囚われの身≠ウながら再び北への道が開かれるのをじっと待っている。

高麗ホテルの接客係

 著者は暗黒の李承晩時代を凌駕する朴正煕時代に生まれ、尋常でない「反共教育」を受けたが、民主化闘争に一身を投じ、民族の進むべき道を見出し、ひたすら統一を目指し前進してきた。

 その彼が熱く語る。統一への道標が6.15共同宣言であり、その具体案を定めたのが10.4宣言であると。南北が手をつなぎ、分かち合い助け合って行動することこそ、21世紀の統一精神であると。統一は「善」であり、統一こそがわが民族の生きる道であると。

 確かに北と南は違う。体制と理念が、価値観と環境が違う。しかし、それは違いであって間違いではない。間違いは正すべきだが、違いは乗り越えられるし、乗り越えるべきである。乗り越える力となる共通性は、まさに5千年の悠久の歴史であり、それを共有してきた民族性である。

 百数十回の講演で、もどかしさを禁じえなかった若者を念頭に置いたのか、難しい問題を軽いタッチと平易な語り口で説いているので高校生でも読み易く、興味深い話も多い。

 「最近の南の世論調査では、統一すべき≠ェ減り、現状維持派が増えている。問題は北の経済である」(第16話)

京義線の連結は、朝鮮半島を一つにするだけでなく、世界の大動脈を連結する大事業である

 「北はヨーロッパの投資家から東方のエルドラド≠ニ呼ばれるほど、豊富な資源と優れた労働力、高い教育熱を持っており、勤勉さと集団主義気質は魅力的だ」とし、「今は南が優良株、北が不良株扱いを受けているが、20〜30年後逆転していない保証はない」(第20話)

 また、「ゴールドマンサックス銀行がウォール街の投資家向けに出したレポートで、統一コリアを展望し、2050年統一コリアのGDPが仏、独、英など現G7を抜く」(第18話)など。

 140ページに「鶏肋」とある。中国の三国志に出てくる言葉で、鶏の肋骨、すなわち大して役に立たないが捨てがたいという意味である。誰が言ったか覚えていないが、鶏肋がそろそろ北へ行くのではないか。一読を奨めたい。

 なお、「民族21」の記者として活動した10年間の朝鮮取材ノートを整理した本書は、219ページ、前・後篇で構成されている。「社会主義の大家族」と題した前篇は、「1、一人はみんなのために、みんなは一人のために」「2、教育を受ける権利と機会の平等、英才教育」「4、マスゲーム『アリラン』は窮屈?」「5、国の王様、子どもからお金はとれません」など15話で構成されている。

 後篇は「有無相通の道」と題し、「16、貧しい北と統一すれば南だけが損?」「17、スエズ運河と朝鮮半島の物流革命」「18、ゴールドマンサックスのバラ色の展望」「19、未来に繋がる統一の門、開城工団」「20、漢江の奇跡と大同江の奇跡」「29、鄭大世の涙」などユニークな項目が並ぶ。(李一満・東京朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮側事務局長)

[朝鮮新報 2011.5.13]