〈本の紹介〉 Jr日本の歴史 7 |
隣人の視点で歴史をみる 「Jr日本の歴史」第7巻は、1945年から現在までが対象。 本書の視点が明確なのは、「国際社会」を「自分の暮らす地域、日本、東アジア、世界の4つがむすびついたもの」と定義しながら、身近な地域の友だち、日本のなかのいろいろな人たち、東アジアや世界の人たちは、いわば隣人だと指摘する。そして、隣人との65年間を振り返り、今後の隣人との関わりについて述べる。 第1章「戦後の出発と冷戦のはじまり」の1「敗戦と占領」の項で、日本の戦後教育が取り上げられている。「あたらしい教育にとりくんだのは、日本人だけではありませんでした」と前置きしながら、在日朝鮮人が取り組んだ民族教育のスタートを歴史的事実を踏まえた公正な視点で取り上げ、これまで脈々と続いてきた朝鮮学校をきちんと紹介している点にも集約されている。ここでは、草創期の朝鮮学校の作文紹介や授業風景まで取り上げられており、読者に多様で幅広い見方を提供しようとする意図が汲み取れる。 一方、第2章「高度成長と冷戦の時代」の中の、「在日朝鮮人の戦後」の項では、社会保障や年金に国籍条項が設けられ、そこから除外された在日朝鮮人の苦境が描かれた。「戦後、生きるための保障をほとんどうけられなかった在日朝鮮人は、自力で生きていかなくてはなりませんでした。在日朝鮮人は、家族や同じ朝鮮人どうしがささえあうことで、どうにかくらしをなりたたせてきたのです」と。 第5章「問いなおされる戦後の世界と日本」には、「従軍慰安婦問題」や「謝罪と賠償をもとめて」などが取り上げられ、第6章では「東アジアの歴史と現在」の中で「高校無償化」問題が言及された。ここでは朝鮮学校が除外されたことの不当性について指摘した。そして、日本の詩人・河津聖恵さんと在日の詩人・許玉汝さんの活動を、「日本政府は、1994年にすべての子どもの教育機会と少数者の子どもの権利をみとめる、子どもの権利条約にくわわりました。子どもの権利条約からすれば、朝鮮学校もふくめて、日本で学ぶすべての子どもの権利が平等に守られなくてはならないということになります。日本に住む日本人や在日朝鮮人の詩人たちが詩を書いて、授業料無償化制度から朝鮮学校だけはずすのはおかしいとうったえました」と指摘した。 本書はこの項をこう締めくくっている。「東アジアには日本の植民地支配の歴史がふかく横たわっています。植民地支配の問題は、いまでも日本社会のなかに、いろいろなかたちでのこされています。過去の歴史をしっかりとみつめ、いまにのこる問題を日本人と在日朝鮮人がともにつくりなおす努力をかさねるなかから、植民地支配の壁をのりこえる東アジアの未来が開けます」。 ジュニア向けとなっているが、大人たちにもぜひ、一読してもらいたい画期的な歴史書。(大門正克著、小学館、1800円+税、TEL03・3230・5117)(朴日粉) [朝鮮新報 2011.5.6] |