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金蓮姫ピアノリサイタルを見て、気取らぬ素朴な演奏

ピアノ曲を演奏する金蓮姫さん

 私は、良い音楽会に巡り合うときが至福のときだと思っている。しかし、場合によっては、必ずしもそうとはいえない音楽会もある。それは何かといえば、自分の教え子やあるいは自分と直接関係のある人の演奏会は、どうしても私情を挟むゆえに、場合によってはドキドキしながら鑑賞することになるからだ。

 先日、北海道で活動する金蓮姫さんの演奏会が札幌で開かれた(金蓮姫ピアノリサイタル−ピアノと共に−2月16日、ザ・ルーテルホール)。

 私は彼女とは大学時代、そしてその後もいろいろと関わってきた縁があるため、是が非でも公演を成功裏に終えてほしいという願いと、久しぶりのリサイタルなので大丈夫かな? という若干の不安とを抱きながら会場へと向かった。

 当日彼女は、いつもとは違う(勿論だが)艶やかなドレス姿で舞台に登場した。これはなかなか気合が入っているなと思わず感じてしまったほどだ。

 演奏の方は、私も年を重ねたせいか、昔は気づかなかった彼女の演奏の特徴を捉えられた感じがした。決して仰々しくなく淡々と、無理なく自然な姿勢と流れ、気取ることなく素朴な雰囲気で…というのが彼女の演奏スタイルだ。

 この夜弾いた曲の中でも特に「雪が降る(ピアノ編曲者不詳)」、「バラード4番(ショパン)」、そして彼女が生徒たちのために書き上げた「ブランコあそび」「夢」などの演奏が印象的で心に響いた。

 欲を言えばもっとメリハリのきいた積極的な演奏をという感は否めなかった。

 北海道のウリハッキョ教育会で働き、家庭の主婦としても忙しく動き回りながら準備を進めたリサイタルだけに、大変な苦労があったことと想像されるが、彼女は忙しい暮らしの合間に在日朝鮮学生ピアノコンクールのための課題曲の作曲や審査員の仕事をもこなしている。

 演奏会場に足を運んだ同胞はじめ日本人も皆満足げな表情で、私も良い演奏会だったと感じ入った。

 この数日前には朝鮮大学校「音楽科合同演奏会」が開かれ、60歳を超えて一念発起し40年ぶりに舞台の上でピアノを弾いた九州の朴さん、50歳を超えて久しぶりにリサイタルを行った金連姫さん、どちらの演奏も私には大変貴重に感じられるうれしい出来事だった。(R・S、東京在住)

[朝鮮新報 2011.4.13]