金英蘭舞踊研究所創立15周年記念第8回発表会 |
希望の笑顔届けたい
3月31日、東京・王子で行われた金英蘭舞踊研究所創立15周年記念第8回発表会では、同研究所の金英蘭所長が創作した「4.3の風」が初めて舞台に上がった。 かつて金さんは故郷・済州島にある「4.3平和記念公園」を訪れたことがあった。そこには米軍により無慈悲に逮捕、投獄され、拷問された3万人の島民たちの残酷な姿が展示されていた。子どもを抱いたまま犠牲になった母親の彫刻は、今でも脳裏に焼きついているという。 4.3事件に加勢しようと、小船を漕いで島へと向かう1人の老人をモチーフに、朝鮮の不世出の舞踊家・崔承喜が創作した独舞「荒波を越えて」。小さな記事で見つけたその老人の思いが、崔承喜の強い創作意欲を駆り立てた。崔承喜に強い憧れを抱き続けてきた金さんもまた、その込み上げてくる思いをどうしても作品にしたかったという。「あの残酷な歴史を自分が(軽々しく)作品にしていいのだろうか、できるだろうか」と悩みもした。しかし、「いま感じているこの思いを作品化し、歴史を伝えていかなくてはいけない」と創作に踏み切った。当日、斬新な現代舞踊とダイナミックな音楽で表現された同作品は、観客に大きな感銘を与えた。 創作に込められた金さんの思いは、「2度と同じ歴史が繰り返されてほしくない」という平和への祈りでもあった。東日本大震災で多くの人たちが被害に遭っている中で、公演を予定通り行うべきか悩んだ。しかし、「こんなときだからこそ、子どもたちが一生懸命踊る姿を通じて多くの人たちに笑顔を届けたかった。絶望の中から希望を見つけてくれる、それこそが芸術の力だと信じている」と話し、「民族の心を養ううえで子どもたちの朝鮮舞踊を愛する気持ちを育むことは大切な使命だと思う。みなさんの力強い支えを励みに、これからもがんばっていきたい」と謙虚に語った。(梨) [朝鮮新報 2011.4.7] |