晴れた日ならともかく、
目の前がこんなに真っ暗な時は
下を見て歩こうよ

言葉を話せない野の生き物たちも
群れを離れずに集まって過すんだよ
野獣の牙から身を守ろうと

背の高い人たちは大抵そうらしい
上には近くても　下は遠くて
上ばかり見て歩きがちなんだと

もしもし、そこの
ひとりで駆けてくのっぽの君
是非とも下を見て一緒に歩こうよ
暗い夜が明ける　せめてその時まででも

いや、下があっての上なんだよ
いつでも下を見て
手招きし、背中を押し、一緒に歩こうよ

「蓬は蓬汁」

（２０１０年・図書出版サムア）

　チョン・ファス（１９３５〜２００９）

　釜山廣城市生まれ。１９５６年東京朝鮮高級学校を卒業。５８年朝鮮大学校文学部（当時）を卒業。東京朝鮮第１初中級学校教員を務め、朝鮮新報社編集局副局長、文芸同中央委員長などを歴任。２０００年に「チョンソリ」詩人会代表となる。詩集に「蓬は蓬汁」「永遠の愛、祖国の懐よ」がある。（選訳・金栞花）

［朝鮮新報 2011.4.4］