何処へ頭を垂れようか
朝露を払いながら
田んぼ道を歩いてくる農夫に
凍った土を突き破り芽を出す杉菜に
氷に閉じ込められた
地球の眼のようなカエルの卵に
生えてくるおたまじゃくしの足に
毎日其処へと越えてゆく太陽と、
上る月と星たちに、そして真っ暗な夜に
自然に熟してポトリと落ちる杏に
大きな木の下でまぁるく座って遊ぶ
村の子どもたちに
草むらにおとなしく座ってスむ牛に
魚たちが行ったり来たり泳ぐ川水に
草取り鎌を手にしたオモニの
土のついた手に
その手の親指―第二関節にある
真昼に浮かんだ弦月のような傷跡に
飛びゆく黄色い蝶と 白い蝶と
燕と ジョウビタキに
宵に独り酒を飲み酔う詩人に
雪を最後まで背負って立っている
背の曲がった大きな枝垂れ松に
翼を怪我した鳥と
鳥の嘴に咥えられた青虫に
雨降る秋の夕暮れ 昔からの山間の村
裏山に立ち続け
雨に真面にうたれる欅の木に 私は 頭を垂れよう (金龍澤詩集「だから貴方」、06年4月・文学の村) キム・リョンテク(1948年〜)
全羅北道任實生まれ。82年に創批21人新作詩集「消えることなき松明で」に「蟾津江1」などを発表し、登壇。金洙暎文学賞、素月詩文学賞を受賞。詩集「蟾津江」「晴れた日」「貴方、突き進む愛」「彼女の家」「木」「恋愛詩集」、童詩集「豆よ、君は死んだ」「僕の糞、僕の飯」などがある。(選訳・金栞花) [朝鮮新報
2011.2.7] |