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くらしの周辺−妻への想い

 東京へ単身赴任して5カ月。エスカレーターの立ち位置(大阪は右側、関東圏は左側)や迷路のような鉄道路線図への戸惑いは薄れてきたが、どうしても慣れないのは一人暮らしだ。3人の子どもたち、とりわけ1歳になったばかりの愛娘に対する恋しさは日を追うごとに募っていく。妻が送ってくれるムービーメールを夜、ベッドの中で何度も再生しては眠りにつく。

 1人になってとくに深く思うことは、これまで妻に苦労ばかりかけてきたということ。一人暮らしゆえの洗濯や掃除、たまの自炊も少々苦であるが、妻の比ではない。給料を半年以上も持って帰らず週のほとんどを「午前様帰宅」だった不甲斐ない「大黒柱」に代わり、毎朝弁当を作って子どもたちを学校、幼稚園、保育園に送り、家の掃除と洗濯をして午後までパート、帰りにスーパーに寄って子どもたちを迎えに行き夕食をつくり、風呂に入れ、長女の宿題をみる…。それが「当然」かのように、何の労いの言葉もなく接してきた自分を恥じている。

 単身赴任後、子どもにばかり電話する私に対して、「アッパはホンマに冷たい! ナには何にもないん?!」と不満を言う妻。ここで素直になれればいいのだが「ありがとう」の一言がなぜか言えない。本当にだめな夫だ。でも、心の底から想っている。「オンマがしっかりしているから安心して離れることができてんで。子どもに対する俺の愛はすなわちオンマへの愛やで。東京での仕事が終わったらしっかり嫁孝行するからな!」。

 でも…やっぱり…こんな文章、家内には絶対に見られたくない…(汗)。(許勇虎・団体職員)

[朝鮮新報 2011.2.4]