今日も
ソウル行きの飛行機が飛ぶ
日本人旅行客を
いっぱい乗せて

その昔、半世紀を
私たちの国に居座って
財とみなせば
祖先の魂を祀る壺まで奪って行った
あの者どもと、その子孫たちだ

なのに、私には
来ては駄目だと云う
余命を宣告され
最後の墓参りに行こうとした
私には

実に不可解なことだ
分断は言うまでもなく
国籍は、永遠ではない
私が見つめる祖国は
南だけでもなく
北だけでもない
私には
三千里にあるどの山も、どの川も
全て私の祖国だ

どうして駄目なのか
どうして行けないのか
翼を奪われたこの痛み

知っていながら
知らぬふり
今日もソウル行きの
飛行機が飛ぶ

（詩誌「チョンソリ」２０１０年秋号）

　チョン・ファフム（１９２３〜）

　詩人。慶尚北道迎日郡生まれ。１９３７年渡日。１９５０年中央大学経済学部卒業後、民族学級、朝鮮大学校などで教鞭をとる。朝鮮作家同盟に所属、在日朝鮮文学芸術家同盟文学部詩分科委員、「チョンソリ」詩人会代表などを歴任。詩集に「感激のこの日」「念願」「タンポポの花」などがある。（選訳・金栞花）

［朝鮮新報 2011.1.31］