top_rogo.gif (16396 bytes)

〈本の紹介〉 「平和力養成講座」

「非国民」を生み出す現状を暴く

 本書は、平和力フォーラム主催の「非国民入門セミナー:そしてみんな非国民になった!?」という連続公開セミナーの記録である。

 セミナーの開催はすでに20回を超えているが、本書には初期の8回分が収録されている。同セミナーは編者が先に出版した「非国民がやってきた!」の出版記念会をかねて、さまざまな現代の「非国民」に話を聞くという趣旨で始まった。

 本書は、第1部、第2部、第3部に分けられている。

 第1部では、「自分を生きる」と題して鈴木裕子・女性史研究家、根津公子・公立中学教員、上原公子・国立市議会議員が軍国主義へと傾く日本の帝国主義、植民地批判主義の視点の劣化現状に対する危惧を示し、天皇制問題、「従軍慰安婦」問題、改悪される憲法などを鋭く批判。マイノリティーを排斥する日本社会の中でも屈することなく、「孤高の精神」で自らの人生を生き抜いた経験談を語っている。

 第2部では、安里英子・沖縄大学珊瑚舎スコーレ非常勤講師、金静寅・在日本朝鮮人人権協会理事、辛淑玉・人材育成コンサルタントが各専門分野の視点、沖縄基地問題や在日朝鮮人の人権問題、部落差別の問題などを、自らの経験した差別に照らし合わせながら、日本におけるあらゆる差別問題を暴いている。

 とりわけ金静寅氏は、日本政府の朝鮮政府に対する経済制裁や「万景峰92」号の入港禁止、国籍問題、JR定期券差別問題や朝鮮高級学校卒業生の国立大学受験資格容認問題など、日本社会の中で在日同胞の権利、生活を脅かすさまざまな差別や人権侵害に関して解説し、その不当性について訴えている。そして、自分たちが日本社会に広くアピールし、身近な友人に伝えながら共感を生んでいく努力をし、互いにわかり合う作業を地道に続けていく必要性について強調している。

 第3部では木村朗・鹿児島大学教授が「『売国奴的新自由主義』とか『好戦的新保守主義』といわれる、従来の『親米派伝統的保守』を超えたような新しい帝国秩序に積極的に乗っていこうとする人々が、政治、経済、体制エリートの中心に居座るようになってきた」と指摘し、冷戦終結後、徐々に強まる日本の米国への従属性を浮き彫りにしている。

 また、立野正裕・明治大学教授は文学的見地からみた、植民地主義の複雑さと非情さについて述べている。(前田朗著、現代人文社、TEL03・5379・0307、1800円+税)(尹梨奈)

[朝鮮新報 2011.1.28]