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〈第33回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 初級部4年 作文部門 1等作品

 本社主催の第33回在日朝鮮学生コッソンイ作文コンクール1等入選作品の日本語訳(本紙編集部訳出)を今号から4編紹介する。

「ファニ」と「カビ」

 日差しがかんかんに照りつけるむし暑い日。

 みんなは、あせをたらたら流しながら学校へと向かう坂道を登るのがいやだと言うけれど、ぼくは早く学校に行きたくて流れるあせもかまわず走っていきます。

 校門をくぐるとまず向かうのは、教室でもなく先生たちがいる教員室でもなく、友だちと遊ぶ運動場でもありません。

 重たいランドセルをおろす間もなく向かうのは、「カビ」のいるところです。

 「カビ!」とよぶとしっぽをふりながら走ってくる犬がまさしく「カビ」なのです。

 「カビ」はぼくのハラボジがかっているプンサン(豊山)犬です。せが56センチ、どうの長さが60センチ、体重は26キロにもなる「カビ」の体には、白い毛がふさふさと生えています。せいかくはやさしいけれど、てきとたたかうときはとても気しょうがあらくなり、ちえがあって勇かんなりょう犬、かっこいいプンサン犬なのです。

 ぼくはハラボジに負けないくらい「カビ」が大好きです。一日中いっしょにいても足りないくらいです。

 なぜ朝鮮の犬、プンサン犬「カビ」がぼくの学校にいるかですって?

 実は「カビ」には「ファニ」という名前の兄弟がいました。ウリナラで生まれた2ひきの子犬は海をこえて日本へと、2カ月以上のけんさを受けて、ハラボジの家にやってきました。

 親せきのおじさんがハラボジのかんれきを祝って、ウリナラからつれてきたプレゼントだったのです。それで名前を朝鮮語のかんれきを表す「ファンガプ」から「ファニ」と「カビ」とつけました。

 ハラボジは長い間ウリハッキョで先生をしていました。今はいっしょに先生をしていたぼくのハルモニといっしょにウリハッキョの教育会で働いています。ぼくのアボジが生まれる前から今日までウリハッキョのために一生けん命働いてきたハラボジのかんれきを祝うため、日本にやってきた「ファニ」と「カビ」。

 ハラボジはウリナラから来た2ひきの子犬を心から大事にしてかわいがりました。小屋を用意してごはんもそのつどあたえ、元気がないときには病院にも連れていってやります。

 ぼくは3さいのときに「ファニ」と「カビ」に会い、まるで兄弟のようにすごしました。なぜならハラボジは、ぼくと子犬たちを同じように愛しかわいがってくれたからです。

 しかし4年前、「ファニ」がふいの事故にあい、永遠にもどらなくなってしまいました。ぼくもハラボジもぼくの家族もあまりの悲しさにわあわあと泣きました。

 「ファニ」がいなくなったことに気づいたのか、「カビ」のなき声も悲しそうに聞こえました。兄弟を失った「カビ」のことを思うとぼくもなみだが止まりませんでした。

 それ以来、ハラボジはさらに「カビ」をかわいがるようになりました。

 毎日いっしょに学校に行って働くときも休むときも「カビ」のことだけを考えていました。ときどきぼくをみて「カビ!」とよぶほどです。

 利口でかしこい「カビ」は学校でも大人気です。

 「カビ」は不思議な力を持っています。学校の前庭の真ん中ですごす「カビ」は、友だちやアボジ、オモニがたずねてくるとしっぽをふりながらうれしそうにむかえるのに、見知らぬ人が学校に入ってこようとすると「ワンワン!」とはげしくほえるそうです。だからウリハッキョにはあやしい人が近づくこともできないのです。「カビ」はまるでウリハッキョを守るキーパーのようです。先生や友だちはみんな、カビが朝鮮で生まれ、ウリマルと朝鮮のうたがきこえてくるウリハッキョでくらしているため、朝鮮人と日本人を区別できるということです。ぼくもそうだと思います。しかしもう一つ理由があるのです。

 「カビ」はわかいころからかんれきをこえる今日まで、ウリハッキョを愛し守ってきたハラボジの気持ちをだれよりもよく知っているからです。ぼくはそんな「カビ」を見ながら、ぼくもウリハッキョで朝鮮の言葉と文字、朝鮮に関するあらゆるものをたくさん勉強して、愛し守っていかなくてはと思います。そして、今日も学校の仕事を一生けん命行うハラボジ、ハルモニを大事にして、大きくなったらハラボジのようにウリハッキョのために働く人になりたいです。

(横浜朝鮮初級学校 金重黎)

[朝鮮新報 2011.1.21]