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北南膠着と合同軍事演習 「対話か対決か」 二者択一迫る

 北南関係が膠着状態に陥る中、米国と南朝鮮の合同軍事演習が続いている。2月28〜3月10日に行われたキー・リゾルブは、北の「急変事態」を想定した戦争シナリオ「作戦計画5029」が適用された。また4月30日まで行われるフォール・イーグルは核およびWMD(大量破壊兵器)除去演習が含まれた大規模な野外機動演習だ。現在の情勢は、朝鮮が「正当防衛のための物理的対応」(外務省スポークスマン)について言及せざるを得ない軍事的対立をつくりだしている。

対決の火種

京畿道で7日、フォール・イーグル合同軍事演習に参加している米軍のストライカー部隊が実弾射撃訓練を行った [写真=統一ニュース]

 注目されるのは、今後の米国の行動だ。朝鮮は、「われわれは対話にも対決にもすべて準備ができている。」(外務省スポークスマン、1日)との立場だ。軍事演習を強行した米国は、朝鮮側が提起した二者択一の問いに答えなければならない。

 昨年、延坪島砲撃事件などで朝鮮半島の緊張が高まった。今年に入り朝鮮は、「平和と安定」のための「幅広い対話と交渉」を提案しさまざまな措置を講じた。米側が「毎年行う通常の演習」だと言い張るキー・リゾルブ、フォール・イーグルが強行されても、朝鮮人民軍はいまのところ敵対国の挑発に対する反応を抑制している。

 しかし、米国が内外に示した「対話意志」を行動で示さない場合、再び軍事的緊張が高まらないとも限らない。

 今年1月、ワシントンで行なわれた中米首脳会談では、「北南対話の必要性」と「6者会談の早期再開」が表明されたが、非核化問題を議論する多国間協議が現在も中断されたままとなっている現実に変わりはない。

 朝米全面対決の火種はいまだ取り除かれてはいない。

 2年前、朝鮮の人工衛星発射を問題視する国連安保理議長声明が採択され、6者会談は破たんした。当時、朝鮮は敵対国の制裁騒動に対抗し、「核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を含む自衛的措置」を講じざるを得なくなったこと、そして軽水炉発電所建設のため核燃料を自力で生産する技術開発に着手することを表明した。その直後に2回目の核実験が行われた。昨年は、軽水炉燃料確保のためのウラン濃縮工場が稼動している事実も明らかになった。

「戦争を彷彿」

 対話が再開されない限り、朝鮮が2年前に明らかにした行動計画が取り消されることはないだろう。ウラン濃縮問題などは、米国にとっても慎重に検討せざるを得ない事案だ。

 現在、対話再開の障害となっているのは南朝鮮当局の対応だ。昨年、延坪島砲撃事件を契機に関係国は緊張緩和に向けた行動を始めた。ところが南朝鮮当局は、「対話外交の再開は南北関係改善が前提」と釘をさし、情勢の急激な変化にブレーキをかけた。

 昨年来、米国も、「南北対話が6者会談再開の第1段階」になるとの立場を示してきたが、2月に板門店で開かれた北南軍事予備会談は南側の破たん策動によって決裂した。

 「こんにちの事態は、(1950年の)朝鮮戦争前夜、平和的統一のためのわれわれの提案に対して、李承晩政権が外国勢力と野合して北侵戦争挑発で応じてきた当時をほうふつさせる」(朝鮮平和擁護全国民族委員会スポークスマン)との指摘は、現在の情勢に対する朝鮮側の観点を物語っている。

 一方、南朝鮮当局は米国と繰り広げる戦争騒動がどのような結果をもたらすのか考慮することもなく、時間稼ぎのための世論工作に余念がない。

 合同軍事演習が始まった翌日、李明博大統領は、「3.1節記念辞」で「いつでも開かれた心で北と対話する用意がある」と述べた。

 軍事予備会談を決裂させておきながら、対話をうんぬんする李明博大統領の言動不一致は内部矛盾の表れだ。朝鮮外務省スポークスマンも、「(李明博政権は)執権以来、北南の和解と協力を否定してきたので、任期が終わるまで自らの対決政策を正当化しなければならない政治的負担を負っている」と指摘している。

時間の浪費

 李明博政権は従来の対決政策を固守する姿勢を貫くべく、「北側が降参し、南に接近してくる場面」を「今後の望ましい局面転換」として想定しているかもしれない。それまで口先だけで対話を呼びかける腹積もりなら、事態の悪化は避けられない。

 米国と南朝鮮の合同軍事演習の最中、朝鮮人民軍は、「高度の撃動状態(射撃準備完了状態)を保ちながら事態の推移を注視している」(朝鮮中央通信)という。「侵略者の核威嚇には朝鮮式の核抑止力強化で、われわれのミサイルを除去しようとする悪らつな企図には朝鮮式のミサイル攻撃戦で応えるであろう」(板門店代表部声明)との警告も発している。

 今年1月、オバマ大統領は中国の胡錦濤主席とともに「6者会談の早期再開」を呼びかける共同声明を発表したが、米国の「対話意志」はいまだ実証されていない。いま朝鮮の軍隊が実際に目撃しているのは対話とは両立しない米国の軍事的挑発だ。米国が対話忌避症に陥った南朝鮮当局と歩調を合わせて時間を浪費するのは、致命的な失策になりかねない。(金志永)

[朝鮮新報 2011.3.11]