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〈久しぶりに訪朝して-A-〉 分断の責任、日本にも


昼食は「甘肉」に舌鼓

メンバーらが訪れた祖国統一3大憲章記念塔

 2日目は、平壌市内の観光が予定されていた。まず、必ず行くところが万景台にある金日成主席の生家だ。農作業の道具や糸車などが保管されており、部屋の中には主席と両親の写真が飾られていた。金日成主席は14歳で朝鮮の解放を志し、この家を出たという。

 次に訪れたところは、チュチェ思想塔。てっぺんに炎をかたどった、ちょうど巨大な「たいまつ」のような形をしている。

 「チュチェ思想」とは、漢字で「主体思想」と表記する。金日成主席が構築した革命哲学で、「人間が世界の主人公であり、それらを開拓する力も人間が持っているという思想です」との説明を受けたが、正直言ってこれだけでは理解できない。しかし、この思想が朝鮮の公式な政治思想となっているというから、機会があればぜひ勉強してみたいものだ。

 この塔の上部には展望台があり、エレベーターで上ることができる。「チュチェ思想」の難しさはともかく、展望台からの眺めは絶景だ。平壌市内が一望でき、まさに「平らな土地」を実感することができた。

 昼食は、めったに食べることができない「タンコギ(甘肉)」料理をいただいた。「甘肉」と言われても何の肉か分からないだろうが、実は「犬肉」のことだ。もちろん、そのあたりをうろついている野良犬やペット犬ではなく、ちゃんと食用に管理された犬肉を使用している。

 「ケ」は犬、「ジャン」は辛みのあるスープという意味で、もともとは「ケジャン」という料理名だったが、最近は「甘肉スープ」と呼んでいるという。朝鮮半島の伝統的な料理で、滋養効果が高く栄養満点とのこと。「みなさん、これを食べると元気になりますよ」と、金明日さんが説明してくれた。夏バテ防止によく食されているというから、ちょうど土用の丑の日にウナギを食べる日本の食習慣と共通するものがある。

 ソウルオリンピック(1988年)のとき、ソウル市内で犬肉を扱う料理店は一掃された。朝鮮民族の伝統的な料理にもかかわらず、韓国政府が犬肉を食べる習慣のない欧米諸国に配慮してのことだった。確かに、犬肉を食べる習慣のない国の国民にとっては、「残酷だ」と思うかもしれないが、古くから鯨肉を食べてきた日本も反捕鯨国から「残酷だ」と言われているのであり、そういう意味ではこれも朝鮮半島の食文化の一つとして理解できる。

 理屈はともかく、食べてみると結構いける味だ。まだ食べたことのない方へは、ぜひお勧めしたい。

3大憲章記念塔にて

 「甘肉」でスタミナをつけた私たちは、東明王陵(高句麗を建国した朱蒙の陵)と、祖国統一3大憲章記念塔を参観した。

 紀元前1世紀頃の朝鮮半島には、高句麗、百済、新羅という3つの古代国家が存在していた。中でも、高句麗は、現在の中国の一部と朝鮮半島のほとんどを支配する強大な力を持つ国家だった。その始祖王が東明王であり、生前の名前は「朱蒙」と呼ばれていた。

 韓国ドラマで「朱蒙」を主人公にした番組が日本でも放映されているらしい。帰国後、韓流ドラマファンの女性に「朱蒙の墓に行ってきたよ」と言ったら、「わー、すごい」という言葉が返ってきた。東明王陵が持つ考古学的な価値は大きいと思うが、国交正常化が実現すれば日本の韓流ドラマファンの女性たちが、この地に殺到することは間違いない。こういう切り口での友好親善の取り組みもありなのではないかと思う。

 その後、祖国統一3大憲章記念塔を参観した。この記念塔は、金日成主席が示した1972年の「祖国統一3大原則」、1980年の「高麗民主連邦共和国創立方案」、1993年の「全民族大団結10大綱領」を記念して建てられたものだ。この3つを総称して「3大憲章」といい、これが祖国統一に向けた朝鮮の基本的な考え方となっている。

 説明によると、「祖国統一3大原則」とは、自主、平和統一、民族大団結を祖国統一の3つの柱とすること。「高麗民主連邦共和国創立方案」とは、朝鮮と韓国の政治制度をそのままにしながら連邦制をとる形で祖国統一を目指すこと。「全民族大団結10大綱領」とは、民族愛と民族自主精神を団結の理念的基礎にして、共存、共栄、共利を図り祖国統一を目指す、ということだった。

 記念塔は、2人の女性が向い合わせで朝鮮半島をデザインしたレリーフを両手で掲げている巨大な像だ。この女性は双子だとの説明があり、南北に引き裂かれた朝鮮民族を表しているという。

 南北分断の北緯38度線は、もともと日本軍の武装解除をソ連軍と米軍が行うにあたって決められた境界線だった。つまり、38度線より北にいた日本軍の武装解除をソ連軍が行い、南のそれを米軍が行うというもの。それが結果として、朝鮮戦争の休戦協定の際、南北を分断する境界線とされたのである。38度線は、戦後世界の覇権争いをめぐってソ連と米国が引いた境界線だと言えるが、朝鮮半島の南北分裂は過去の侵略戦争の歴史を直視するならば、日本政府も責任を負わなければならない問題である。(部落解放同盟兵庫県連合会事務長・川端勝)(つづく)

[朝鮮新報 2011.1.21]