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カーター訪朝と首脳会談提案

総書記の「伝言」、転機の予兆

 朝鮮半島問題をめぐる対話外交の再開に向けた動きが続いている。月には中、米の外交当局者が相次いでソウルを訪れ、6者会談再開のための「段階方案」を議論した。月末にはカーター元大統領が訪朝、李明博大統領と「いつでも会い、すべてのテーマについて論議する用意がある」という金正日総書記のメッセージを受け取り、その内容をソウルの会見場で公開した。これまで哨戒艦沈没事件、延坪島砲撃事件を口実に北との対決路線に固執してきた南朝鮮当局は方針転換を迫られる情況にある。

3段階」の準備

カーター元大統領は、ソウルでの会見で北南対話に関する総書記のメッセージを公開した。 [写真=聯合ニュース]

 現在、関係国の間では「北南6者会談団長対話−朝米対話−6者会談再開」という「3段階方案」に関するコンセンサスが形成されている。今年月に行なわれた中米首脳会談は、朝鮮半島の平和と安定のための北南対話と6者会談の早期再開を呼びかけた。「3段階」プロセスの起点はその目標を達成するために考案されたようだ。すなわち「6者」の枠組みの中で「北南対話」を行うというアイデアは、対話再開の流れに逆行しようとする南朝鮮当局の動きを国際政治の力学によって封じ込めるものだ。

 関係国は、カーター元大統領の訪朝を控え、対話外交再開のための外交折衝を行っていた。月中旬、朝鮮の金桂官第外務次官が北京を訪問し、中国外交部は「3段階方案」の構想を明らかにした。その直後、米国のクリントン国務長官がソウルを訪れた。李明博大統領に「6者枠内での北南対話」を求めたと伝えられている。

 カーター元大統領も訪朝に先だち、北京で 楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相と面談している。彼の訪朝期間中には中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表がソウルに滞在した。

 6者会談再開に向けた各国の動きが活発化する中、北との対決を煽り続けて来た南の保守勢力は、自分たちの対話妨害工作にブレーキがかかり、外堀を埋められつつあることに危機感を抱いていたはずだ。

南の対話忌避

 カーター元大統領の訪朝計画に対する李明博政権の態度は関係国のそれとは対照的だった。青瓦台は米国の元大統領が訪朝後、ソウルに立ち寄っても「李明博大統領は会わない」というシグナルを出していた。

 カーター元大統領は1994年にも訪朝した。金日成主席の接見を受け、これを契機に核問題をめぐる朝米対立の打開案が提示され、分断史上初の北南首脳者会談の合意が成し遂げられた。カーター元大統領は訪朝直後、ソウルで当時の金泳三大統領に会っている。

 李明博政権は、2011年のカーター訪朝を北南関係の改善のために積極的に活用しようとはしなかった。米国がクリントン国務長官のソウル訪問などを通じて南の「対話忌避症候群」を確認したのであれば、それは「3段階方案」の構想を共有する関係国にも間接的に伝わる。

 結果的にカーター元大統領は今回、金正日総書記のメッセージを金桂官第1外務次官を通じて伝達された。彼はその内容をソウルの会見場で公表するほかすべがなかった。

 南朝鮮当局は、総書記との面談が実現しなかった元大統領の訪朝を過小評価し、彼が伝えたメッセージも「新味がない」と一蹴した。今のところ、当局の公式見解は以前と変わらぬ対北強硬論だ。しかし総書記からの「伝言」には、今後の情勢発展を先取りする提案が含まれていた。

 カーター元大統領によると、総書記は李明博大統領との対話すなわち「北南首脳会談」について言及し、「6者会談関連国といつでも如何なるテーマについても前提条件なく協議に出るとのメッセージを伝えた。」という。朝鮮の最高指導者直々の意向表明だ。関係各国は重視せざるを得ない

「民族対話の要求」

 カーター元大統領の訪朝中、ソウルに滞在した武大偉特別代表は南側と「3段階方案」を議論したという。現地では双方の意見が一致したと報道されたが、中米がすでに調整した対話再開プロセスを南朝鮮当局がいつまでも拒み続けることは出来ないというのが大方の見方だ。

 一方、南朝鮮当局が6者会談の枠組みの中で、北との対話を行った場合、従来の対決レトリックを繰り返せなくなるとの観測もある。核問題をテーマにした国際的多者協議である6者会談の一環として対話する以上、南側が北を誹謗するために全体の協議進展に障害となるような無理難題を持ち出すことは許されないということだ。

 実際、李明博政権内からも「北の謝罪」を求めるとした「哨戒艦沈没」、「延坪島砲撃」というふたつの事件と核問題の議論を切り離し、対話外交再開の動きに積極的に合流すべきとの声が上がっているようだ。しかし核問題の当事者は朝米だ。中米が促す「6者枠内の北南対話」を続けたとしても、南朝鮮当局は核心的な議論の「蚊帳の外」に置かれる公算が高い。

 こうして見ると4月末にカーター元大統領によってもたらされた「伝言」は、李明博大統領にとっても無視できないものであることがわかる。北南の懸案を議論する「首脳レベルでの民族対話」を提案した総書記の意図は、今後の情勢を見据え、緻密に計算されたものだ。それは南の現政権が決断すべき政策転換の方向性、想定すべき局面打開のタイミングを示唆している。

 5月9日、李明博大統領は訪問先のドイツで「北が核放棄について国際社会と合意するならば、来年3月にソウルで開かれる開かれる核安保サミットに金正日国防委員長を招請する」と言明した。北の対話攻勢に対抗しきれなくなった南の今後の判断が注目される。

[朝鮮新報 2011.5.10]