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そこが知りたいQ&A−軍事予備会談決裂の原因は?

対話破綻もくろむ南の戦術

 注目を集めた北南高位級軍事会談開催のための予備会談(8〜9日、板門店)は、双方の対立点を浮き彫りにし、今後の日程も決められないまま決裂した。今回、軍部レベルの交渉で示されたのは、北側の関係改善要求に対する南側のあからさまな拒絶反応だ。

 Q 今回の会談は、西海砲撃戦(昨年11月23日)以来、初めての北南対話として注目された。

 A 南の国防部や統一部など北南関係改善を望まない勢力にとって今回の決裂は想定内であったに違いない。会談の内容を見れば、南側がはじめから合意達成に関心がなく、交渉過程に障害を作り出す戦術に終始していたことがわかる。

 予備会談決裂と関連して北側代表団が発表した「公報」によると▼高位級軍事会談の議題設定▼代表団構成▼会談日程などで双方が異なる主張をした。

 それらは単なる会談の実務手順に関する見解の相違ではない。対立の本質は、北側が対話を通じた関係改善を目指し、南側がそれに反対しているということだ。

 現在、中米などの関係国は朝鮮半島の緊張緩和を訴え、6者会談など対話外交の再開について公言しているが、南の軍部や政府内の「対決論者」は国際社会のすう勢に逆行する対抗勢力と化している。

 Q 南側は会談決裂の責任を北側になすりつけようとしている。

 A 北南対話を提案したのは北側だ。やっと実現した会談を決裂させなければならない理由などない。

 年始の3紙共同社説で北南関係改善を主張し、「当局会談の無条件、早期開催」を求める政府・政党・団体連合声明(1月5日)も発表した。

 高位級軍事会談の開催を提案したのは、中米首脳会談(1月19日)で「北南対話の必要性」と「6者会談の再開」について言及した共同声明が発表された直後だ。北側の対話攻勢は、朝鮮半島の平和と安定をテーマに据えた関係各国の新たな外交アプローチと連動しながら展開されてきた。

 高位級軍事会談の開催を提案した北側は、会談の議題設定で南側の内部事情を十分考慮したと言える。

 北側の対話攻勢に直面した南側は、当局会談が開かれた場合、哨戒艦沈没事件と延坪島砲撃戦を取り上げるとの立場を示した。それを踏まえ、北側は事件に対する双方の見解を明らかにすることを軍事会談の議題とし、朝鮮半島の緊張状態を解消するための方策も講じようと提案した。南側は北側の提案に応じる形で予備会談に臨んだはずだ。

 ところが、板門店に現れた国防部の代表は議論の入り口で無理難題を持ち出した。南側が「北の挑発」だと一方的に主張する二つの事件に対し、北側が「責任ある措置」と「追加挑発防止確約」を行うことだけを議題にすべきだと主張したのだ。

 Q 議題に関する相違点について、南側は「手順の問題」にすぎないと説明している。

 A 2つの事件の解決を先に論議し、その後で軍事的緊張緩和の方法を議論しようというのが自分たちの立場であって、北側の主張を全否定したのではないという国防部の発表は弁明にすぎない。

 南のマスコミも、議題をめぐる対立は「すべてを一度に扱うか、あるいは回数を重ねながら協議するかの相違」であると解説した。これらは、会談決裂の原因を実務手順の問題に矮小化する巧妙な世論操作だ。

 昨年、北側は哨戒艦沈没事件の真相を解明するために、国防委員会検閲団を現地に派遣するという提案を行った。

 しかし、南側は受け入れなかった。軍事会談の議題を「北の挑発」と主張する事件だけに限定すれば、南側は自分たちが主張する結論が出ないかぎり、いつまでもこう着状態を続けるという交渉術をとるだろう。過去、日本が「拉致問題」を口実に朝・日関係の改善を阻み、6者会談の進展を妨害したのと同じ構図だ。

 Q 南が北との対話に積極的でないのはなぜなのか。

 A 朝鮮半島に戦争再発の危機をもたらした延坪島砲撃事件と、その後の事態進展が直接的な要因だろう。

 北側は南側の砲撃挑発に対して断固たる国防意志を示した。危機収拾の過程でも外交力を発揮し、平和と安定を目指す国際政治の潮流に積極的に対応した。年始から中米共同宣言の内容を先取りするような対話攻勢を南に対して仕掛けたのも、北側が情勢の推移を正しく見極めている証拠だ。

 一方、南側は対決から対話への局面転換についていけず、対北関係においても守勢に立たされた。

 中米は首脳会談を通じて北南対話を奨励し、6者会談など対話外交の再開へと舵をきった。

 急変する国際情勢の中で北と南が存在感を示し、情勢発展のイニシアチブを行使する方法はある。北南首脳合意を履行し、みずから平和統一の軌道を切り開けばよい。ところが現在の李明博政権は、過去3年間、その路線を否定してきた。

 Q 今後、対話再開の動きはあるのか。

 A 軍部レベルでの交渉行き詰まりを解消すべき責任は、青瓦台の主である李明博大統領にある。北側が求める政府レベルでの対話チャンネルを模索し、こう着打開をはかる方法もあるが、今のところ表立った動きはない。

 南の「対決論者」たちは、北南対話を破たんさせることで関係国による対話外交の流れを遮断することを目論んでいるかもしれないが、状況は切迫している。対話の機運が高まり当面の危機からは脱したものの、朝鮮半島の軍事的対立がすべて解消されたわけではない。

 今回の予備会談で南側は、「2月末頃の本会議開催」を主張したが、今月28日からは米・南による合同軍事演習キーリゾルブ、野外機動訓練フォールイーグルが予定されている。普通に考えれば対話を行えるような状況ではない。

 「戦争と平和」のテーマをめぐり、パワーゲームが繰り広げられている現在の状況下で、南が対話自体を拒否するならば深刻な結果を招きかねない。

 最近、オバマ政権は核兵器や大陸間弾道ミサイルなど、朝鮮の軍事力が米国にとって「直接的脅威」になっているとの見解を繰り返し表明し、国内では対話の必要性を指摘する声もあがっている。

 米・南は「南北対話を6者会談に先行させる」ことで一致しているというが、情勢の変化如何によっては、それが必ずしも緊張緩和の手順になるとは限らない。現在の状況は1950年代、李承晩政権が「北進戦争」を主張し、朝・中・米による停戦協議に反対した当時の構図をほうふつさせる。(金志永)

[朝鮮新報 2011.2.21]