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そこが知りたいQ&A−北南対話、朝鮮の方針は?

「Win−Win」の関係を目指す

 朝鮮が提案した北南高位級軍事会談を南側が受け入れ、実務問題を討議する予備会談が今月8日、板門店で行われる。年始から北南関係改善のための「幅広い対話と交渉」(政府・政党・団体連合声明)を訴えてきた朝鮮は、民族共同の利益を先行させることが「対話再開の出発点」(労働新聞)との観点に立ち、南側に積極的な対応を求めている。昨年起きた砲撃戦の当事者たちが懸案問題を議論する軍事会談は、その最初のラウンドとなる。

 Q 軍事会談では何が議論されるのか。

 A 会談を提案した人民武力部長の公開書簡は「天安」号沈没事件、延坪島砲撃事件に対する見解を明らかにし、朝鮮半島の軍事的緊張状態を解消することを「議題」にするとしている。

 朝鮮は1月5日に政府・政党・団体連合声明を発表し、「実権と責任を持つ当局」による会談の「無条件開催」を求めたが、南側は犠牲者を出した一連の事件に対する議論を「対話提案」の真意を測る基準にするとした。これは「対話提案」を拒否するための口実との指摘もあったが、朝鮮は南側の意向を汲み取った。現段階で北南対話を実現するためには、それに抵触するような誤解や不信の感情から取り除かなければならないと判断したのであろう。哨戒艦沈没事件や砲撃事件は軍事問題なので、対話の形式も必然的に軍事会談として設定された。

 Q 南側は対話再開についてどのような態度を示しているのか。

 A 李明博政権は昨年来、朝鮮が主張する当局会談を回避する姿勢をとり続けてきたが、11月に西海で砲撃戦が起きると、緊張緩和を求める世論が形成され、国際社会でも対話外交再開の機運が高まった。

 とくに延坪島砲撃事件で南の砲撃挑発に対する朝鮮人民軍の断固たる防衛意志を目の当たりにした米国は、従来の軍事的強硬策を追求することが難しくなり、朝鮮半島の平和、安定のための「対話の必要性」について公言せざるをえなくなった。このような米国の方針転換によって、南朝鮮当局の対北姿勢も変更が求められることになった。

 北南は軍事会談の開催で一致し、板門店で会談の実務的問題を討議することになっているが、現状では対話再開の目的に関して、北南間に温度差があるのも事実だ。

 李明博政権は、北と対話せざるをえない状況に追い込まれたが、会談を行う以上、自分たちの主張を通さなければならないとの観点から、対話の戦術を練っているようだ。南の当局者は、「会談が成功するか否かは、北の態度変化にかかっている」との発言を繰り返している。

 Q 会談が始まれば、朝鮮も自分たちの主張を通そうとするのでは。

 A 朝鮮は、過去の会談とは一線を画して対話に臨もうとしている。先月ワシントンで行われた中米首脳会談では、「真摯で建設的な北南対話」を求める共同声明が発表された。西海砲撃戦を機に、朝鮮半島をめぐる国際政治の潮流は変わった。朝鮮は中・米という2つの大国が、北南対話を後押しする現在の状況を「民族の懸案問題を自主的に解決する千載一遇のチャンス」と見ているようだ。

 朝鮮半島の「平和」と「統一」は、民族共同の利益だ。北と南が「勝ち負け」を競い合うことで実現するものではない。朝鮮は高位級軍事会談を提案して以来、「(対話で)民族の利益よりも個別的階級や階層の利益を先行させるならば、北南関係で提起される問題は何一つ解決されない」(労働新聞)との主張を述べている。今後、民族が共同歩調をとれずに北南の足並みが乱れてしまえば、朝鮮問題に干渉する隙を外国勢力へ与え、「平和」「統一」のチャンスを潰すことになるということだ。

 Q 李明博政権発足後、本格的な当局会談は行われていない。対話に有利な国際環境があるとしても、対面を実現した北と南が、いきなり民族的見地から議論を深めることが可能だろうか。

 A 南の出方を見るしかない。朝鮮は「民族の重大事」を議論する当局会談を重ねることで、北も南も勝利する「win-win」の関係を目指している。民族対決路線に固執してきた李明博政権が、直接対話の再開を機に北に対する疑念を払い、相手の意図を理解すれば、進展が望める。

 これまで朝鮮が繰り返し述べてきたことだが、「朝鮮民族にとって重大事は統一問題を解決すること」(労働新聞)だ。南も総論としては異存はないだろう。2年の任期を残すだけとなった李明博政権が大局的観点に立って北南対話に臨めば、互いの一致点を見つけることは可能だ。

 Q 南は軍事会談以外にも非核化問題に関する当局会談の必要性を主張している。朝鮮側の反応は。

 A 朝鮮半島の核問題は、朝鮮に対する米国の核戦争威嚇と敵視政策によって発生した。その解決のためには、問題の根源を取り除くことができる対話の方式が必須だ。北南間で対話を続けたとしても、米国の行動が伴わなければ、朝米核対決の現状が変わることはない。

 北南対話が始まれば、米国が直接関わる別チャンネルの対話が行われることも予想される。朝鮮外務省代弁人の談話(1月26日)は、南の主張などを念頭に置きながら「幾通りの対話がそれに合致する議題を扱うようにしながら、共通点を探し、違いは後回しにする原則」について指摘。そのような「原則」に沿って「問題を一つずつ解決していくのが真の対話姿勢だ」と強調している。(金志永)

[朝鮮新報 2011.2.2]