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朝鮮政府、政党、団体連合声明 「統一」展望した「重大提案」


北南で「民族の重大事」議論

 朝鮮は、元旦の3紙共同社説で北南関係改善を呼びかけたのに続き、5日には政府、政党、団体連合声明を発表、「幅広い対話と協議」を提議した。声明発表の背景には、昨年11月の西海砲撃戦で表面化した朝鮮半島の軍事的対立をめぐる国際政治の動きがある。中国と米国は「朝鮮半島の安定」を当面の外交課題として位置づけた。21世紀の新しい10年が始まる年、朝鮮は関係国の動向を注視しつつ、民族の懸案問題を一括妥結する方向へと全面攻勢の舵を切った。

無条件で会談開催

連合声明の発表を報じる6日付の労働新聞1面

 南朝鮮当局と政党、団体に向けて発表された連合声明は、「重大提案」と呼ぶにふさわしい内容を含んでいる。過去の「対話アピール」に比して、今回の提議は「破格」とも言える。北南関係の実務レベルではなく、金正日総書記の意志と決断を反映したものと見るのが妥当だろう。党機関紙である労働新聞は、連合声明を1面トップに囲み罫線のレイアウトで掲載した。

 連合声明は、北南当局の会談を「無条件で、早急に」開催することを主張した。対話の議題も特定せず、「民族の重大事にかかわるあらゆる問題を協議して解決」していこうとの「開かれた姿勢」を示した。これは、対北対決路線に固執し、対話回避を続けてきた経緯から「北側の提案」に「受身の姿勢」で臨めない南朝鮮当局の事情を考慮したものだ。

 とくに「実権と責任を持つ当局」という表現を用いて、対話を促している点が注目される。連合声明に込められた朝鮮のメッセージは明白だ。これ以上、北南間で「対話のための対話」は行わないということだ。

 連合声明は、朝鮮半島情勢と北南関係の現状を踏まえている。

 昨年、北南関係は悪化の一路をたどり、西海で砲弾が行き交う状況にまで至った。連合声明も現在の軍事的対決状況が、「南朝鮮当局の親米、同族対決政策による結果だ」と断定している。

 李明博政権は北南合意をすべて覆し、米国の対朝鮮敵視政策、軍事的圧力路線に追従した。その結果、昨年は「天安」号沈没事件などで朝鮮半島に一触即発の情勢が生まれた。「北との対決」に躍起になった李政権が、西海で砲撃戦が起きた後も、従来の路線を変更することなく突き進めば、戦争という最悪の事態を招きかねない。

先軍外交の実績

声明では、当局会談の無条件開催が提案された(写真は07年に行われた北南総理会談)

 西海砲撃戦によって、朝鮮半島における「戦争と平和」というテーマが浮き彫りになった。中国をはじめとする関係国も外交的な動きを見せている。北南対話に関する朝鮮の「重大提案」と各国の動向が重なり合う局面が生まれているのは、偶然ではない。

 連合声明が発表された日、米国のボズワース対朝鮮政策特別代表がソウルを訪問、統一部長官などと会談した。ワシントンでは中米首脳会談を準備するために楊潔ハ外相とクリントン国務長官が会談を行っていた。米国務省が明らかにしたところによると、会談では朝鮮半島問題が「極めて詳しく」長時間にわたって議論された。朝鮮が示した「重大提案」も中米外相が議論した事案であったという。

 国際政治の舞台では戦争の瀬戸際にある朝鮮半島情勢を沈静化させるための外交努力が続けられている。朝鮮の先軍外交が、その流れを作りだした。

 局面転換の起点をもたらしたのは、南の軍事挑発によって勃発した延坪島砲撃事件だ。朝鮮人民軍の断固たる国防意志を目撃したオバマ政権は、自国の利益のために朝鮮半島で軍事的な対決を煽るこれまでのやり方を見直さざるをえなくなった。

 分断の元凶であり、戦争騒動の張本人である米国が、世界の面前で「平和と安定」を議論せざるをえなくなったのは、大きな事態の進展だ。

 ソウルを訪問したボズワース特別代表は、南側と「北南対話が6者会談再開の出発点」というコンセンサスを確認したと伝えられている。メディアは、米国が「同盟国」である南朝鮮に配慮し、対話再開のための名分を用意したと指摘している。

 一方、朝鮮は現在の情勢を民族的利益の立場から判断している。米国の意向を基準に行動しているわけではない。6.15共同宣言に明記された「わが民族同士」という理念に基づき、北と南が共同歩調をとれば、大国の干渉を受けずに、情勢発展のイニシアチブを握ることができるというのが、朝鮮の一貫した立場だ。2011年の年頭に発表された連合声明は、そのような「民族共助」の意志を実践に移したものだと言える。

新たな10年を

 西海砲撃戦が起きた後の国際情勢の推移を把握できていない南の保守勢力は、朝鮮の対話提案を外部からの「支援」を期待し、「国際的な孤立」から抜け出るための「ジェスチャー」にすぎないと主張しているが、今回の連合声明は、目先の現実に対応するためだけのものではない。朝鮮は「平和」と「統一」に関する諸条件を冷静に判断し、中長期的観点から提案を行っている。

 今年の3紙共同社説は、「21世紀の最初の10年」を総括し、2011年から始まる10年を展望している。そして、「最初の10年」を締めくくる去年の出来事について「金正日総書記が意図した通り推進された」と評価した。

 連合声明も「21世紀の新たな10年代」を「統一と繁栄の年代」にしなければならないと訴えている。

 ふり返れば、「最初の10年」が始まる世紀の分岐点でも、朝鮮の指導者が下した決断が大きな転換点を作りだした。

 2000年には分断史上初となる北南首脳会談が開催され、6.15共同宣言が発表された。その後、朝米間でも関係改善をうたった共同コミュニケが採択された。

 その後の10年間、紆余曲折はあったが、2011年という「次の10年」を展望する時点で、北と南が「民族の重大事」を虚心坦懐に議論できる局面がふたたび開かれた。

 李明博政権は、連合声明に込められたメッセージを正しく受け止めるべきだ。

 声明は、北南対話に対する「各国政府と国際機構」の「支持」を呼びかけているが、実際に朝鮮の先軍外交によってそのような国際環境が形成されつつある。

 北南対話の実現と懸案問題解決のために、南側も決断を下さなければならない。(金志永)

[朝鮮新報 2011.1.14]