「高校無償化」 横浜弁護士会会員が朝鮮学校訪問 |
現場に足を運んでこそ 横浜弁護士会の会員27人が13日、神奈川朝鮮中高級学校を訪ね、朝鮮学校の生徒たちと交流会を開いた。弁護士会のメンバーが同校を訪問したのは初めて。現在、横浜弁護士会では朝鮮学校への「高校無償化」制度の適用を求める要望書を提出する準備をしている。自らが在日朝鮮人による民族教育の実態と現状を正しく理解し、横行する差別や偏見を少しでも解消しようと朝鮮学校を訪ねた弁護士会の会員たちは、授業を見学した後、生徒たちと座談会を行った。また、生徒たちの文化公演も観覧した。
生徒たちと座談会
まず弁護士たちは中級部、高級部の授業を見学した。 中級部2年の日本語の授業では夏目漱石の「坊ちゃん」の授業が行われていた。弁護士たちは夏目漱石が小説家になった経緯、雅名の由来などを教える教員の言葉にじっくり耳を傾けていた。授業中、時おり生徒たちの発する笑い声や、ウィットに富む教員とのやりとりに弁護士たちも思わず笑顔になった。授業を一通り見学した後弁護士たちは、朝鮮学校で使用している教科書に目を通した。 座談会では、弁護士たちと朝鮮学校の生徒たちの間で質疑応答が行われた。 弁護士側からは、「朝鮮学校に通いながら差別を感じたり、不便に思ったことはないか」「『高校無償化』から朝鮮学校のみが除外されていることについてどう思うか」などの質問がされた。
生徒たちは、「家から学校までの遠い道のりを毎日通うのは大変。親の経済的負担を考えるとつらいが、それでもここで学びたいと思っている」「相手に対する無知は差別と偏見を生むと思う。僕たちが声を上げるのはお金が欲しいからではない。差別をしないで、日本の高校生と同じように平等に考えてほしい」などと、大勢の弁護士を前に少し緊張しながらも自分の考えをはっきりと述べた。
生徒からも弁護士側に向けて質問が出された。「弁護士になるためには、どのくらい勉強しなければいけないですか?」という生徒の質問は、会場からの笑いを誘った。座談会は次第に互いの緊張もゆるみ、和やかな雰囲気の中で進められた。 また、弁護士側から生徒たちに自分の進路についてどう考えているかとの質問が出た。 ある高級部3年生の男子生徒は、「1世、2世たちが同胞の権利を獲得するためにたたかってきた歴史を知っている。僕は朝鮮大学校に行って法律を学びたい。在日同胞たちが、日本社会で堂々と胸を張って生きていけるような環境をつくれる人間になりたい」と胸を張って話した。 交流会に参加した清水俊弁護士は、「英語や日本語、数学などいろんな授業を見学したが、日本の高校で行われている授業とほとんど変わりない。授業中に笑い声が響き、あたたかい印象を受けた」と話した。 交流会の窓口となった沢井功雄弁護士は、今回の朝鮮学校訪問について、「弁護士の中にも現状を知らない人はいる。見るのと見ないのとでは全然違う。朝鮮学校に実際足を運んで、教員や生徒のみなさんと交流を持つことによって理解が深まると思った。今後、朝鮮学校を訪れたメンバーが中心となって、外国人の権利を守る取り組みに励んでいきたい」と話した。 横浜弁護士会は昨年3月、「高校無償化」制度がすべての外国人学校を対象にすることを求める会長声明を出した。同弁護士会では、いまだ朝鮮学校だけが「無償化」制度から排除されている事実を重く受けとめ、現在の差別是正を求める要望書を県に提出するための作業を進めている。(李炯辰) [朝鮮新報 2011.4.25] |