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〈教室で〉 東京中高 中級部 家庭 崔誠圭先生

実践・体験通して身につく力

 東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の多目的室には、小麦粉、ニラ、ニンジン、サラダ油、塩、しょうゆ、酢などの食材と調味料の他に、まな板、包丁、フライ返し、泡立て器、ピーラー、ガスコンロ、フライパンなどの調理器具が置かれていた。

 中1「家庭」の調理実習を指導するのは崔誠圭教員(43)。始業チャイムと共に教室に入ってきた22人の生徒たちは、それぞれ3〜4人ずつ6つのグループに分かれて作業に取り掛かった。

調理実習

授業では、生活の自立に必要な知識と技術を身につける

 この日のテーマは「チヂミ」作り。

 ホワイトボードにはいろんなチヂミの写真が貼られている。一通り説明を終えた崔教員は、「2時間以内に与えられた食材とそれぞれが持ち寄った食材を使って、授業中に学んだ調理器具の使い方をよく思い出しながら自由に調理するよう」指示した。

 一斉に作業に取り掛かる生徒たち。教室が一気に活気づいた。

 「先生! 小麦粉に水はどれくらい入れたらいいですか?」「先生! 水を入れすぎました!」「先生! 硬くてベタベタなんだけど、いいですか?」「先生!」「先生…」。

 崔教員は生徒たちのもとへと忙しなく足を運ぶ。

 野菜を刻むシーンにおいては、ある男子がニンジンを輪切りに刻む傍らで別の子が、「ニンジンはもっと細く切るんだろう? もっと細くだよ、ほ・そ・く!」と声をかけている。指摘された男子は、慌てて千切りに切り替える。一方、長ネギのみじん切りに苦戦する男子や、ニラをさらに細く千切りする女子など、様子はさまざまだ。

 手際よく作業を進めていたある男子のグループでは、フライパンにダイナミックにたねを流し込んでいた。片方の手で軽々とフライパンを操り、器用にチヂミをひっくり返す。周りからは「おぉー!」と歓声が上がった。

 12時30分。いよいよ試食タイムだ。生徒たちは口々に「おいしい」と頬をほころばせながら、自作のチヂミを頬張っていた。

 「難しかったのはニンジンの千切りと引っくり返すところ」「家で食べるチヂミよりかなり厚い」「みんなで作ったので楽しかった」と感想を述べていた。

「生きる力」身につける

 「家庭」の授業では、これまで料理や裁縫の他にも、女性同盟の協力を得て、子育て中のオモニと赤ちゃんたちを招いての育児実習や、食物連鎖・環境問題、食品添加物への関心を高めるための授業なども行ってきた。

 育児実習の中で生徒たちは、突然おしっこをしたり泣き出したりする赤ちゃんたちの思いがけない行動に戸惑いながら、親たちが自分をどのように育ててくれたかを深く考えた。

 崔教員は、教科書を基本に、参考書やインターネット、女性同盟・保護者のオモニたちのアドバイスを参考にしながら授業を組み立てている。本来、美術教員である彼は、家庭の授業においても生徒たちの意欲的な活動とグループでの取り組みに最も重点を置いている。細心の注意をはらうのは、ナイフと火の扱い方。

 「本来、学校内へのナイフの持ち込みと火の使用は固く禁じられている。それらを正しく使う術を学ぶのが家庭の授業。基本を教えたら、あとは危険のないよう生徒たちが自分で考え、楽しく工夫しながら作業を進められるよう心がけている」

 1学期、授業開始に向けて、生徒たちには家庭での家事の分担量を報告させている。1年間の授業を通して少しでも子どもたちが積極的に家事にかかわるよう呼びかけるためだ。

 23年の教員生活のうち「家庭」の授業を受け持ったのは3年ばかり。授業を通して、生徒たちの生活への関心を高め、日常生活に必要な知識と技術を身につけ、生活を工夫する実践的な力を育てていきたいと考えている。そして、家庭と社会、環境との関わりを理解する中で、人間の健全な生活を総合的に捉えてもらいたいとも思っている。

 限られた授業時間の中で、生徒たちに多くのことを理解させ、体験させるための工夫は続く。

 「子どもたちには『生きる力』を身につけてもらいたい。そのためには、いかに生徒たちの意欲を高め、彼らが積極的に活動できるよう授業を組み立てるかが肝心だ。これからも授業を通して、生徒たちの想像力と創造力を高められるよう、いろんな場を提供していきたい」と話した。(文−金潤順、写真−文光善)

[朝鮮新報 2011.4.1]