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第21回総連各級学校教員たちの中央教育研究大会 15の分科 187編の論文

教育研究の集大成、活発な意見交換

 日本各地の朝鮮幼稚班と朝鮮初・中・高級学校教員たちを対象に開かれた第21回総連各級学校教員たちの中央教育研究大会(1月29〜30日、東京朝鮮中高級学校)には、650人の教育関係者らが参加し、今年もさまざまな授業方法に関する取り組みや教育実践、教育研究の成果などが活発に話し合われた。その一部を紹介する。

理科分科 「発見の喜び」知ってこそ

正確な知識を身につける上で効果があったと語る白教員

 理科分科では、実験・観察・飼育活動を通して子どもたちの興味を引きつけ、「発見の喜び」や「知る楽しさ」を感じさせる授業研究の他、科学的思考力を高めるための実践など、初級部6編、中級部9編、高級部3編の論文発表と補助討論が行われた。

 白瑠衣教員(北九州朝鮮初級学校)は、初3「昆虫の体を知ろう」の授業で模型づくりを取り入れた。子どもたちが「観察しているようで実のところ細部まで正確に把握していない」とにらんだからだ。昆虫の特徴は、@体が「頭」「胸」「腹」の3つに分けられるA4枚の羽は「胸」の背中側につきB足は6本で「胸」の腹側についているC触覚は2本で「頭」の先についているという点だ。チョウの模型を作った児童らは、「特徴」をうまく再現できただろうか。発表からは、制作と修正を繰り返しながら正確な知識を身につけた子どもたちの様子が伝わってきた。

 分科会に参加した他校の教員からは、「大人でも目で見て知っていると思っていても、実際に描いたり作ったりしてみると意外と正確でないことはよくある。子どもたちの興味を引きつけつつ正確な知識を身につけさせた効果的な授業だ」「次回はチョウとはバランスの違う昆虫にも同じことが適用されるか試してみては」「昆虫の授業では実物を見せるのも大切。採集・飼育はうまくいかないことも多いが、それと並行させればより効果が増す」などの意見が寄せられた。

 白教員の授業は、子どもの関心と意欲を引きつけながら楽しく正確な科学の知識を身につけさせる有効な内容として高く評価された。

 理科分科では、今後も子どもたちの科学的思考力を高めることに重点を置き、初・中・高級部の特徴に合わせた授業の組み立てに取り組んでいく構えだ。

英語分科 夢と向き合うスピーチ作り

英語力、学習能力を高めるための取り組みが紹介された

 英語分科では、2日間にかけて中級部2編、高級部2編の論文と、2編の補助討論が発表され、少人数授業、Speaking指導、Reading指導、基礎学力育成の4つのテーマに沿って経験討論、意見交換が行われた。

 分科会は、教員らが授業の質を高め、生徒たちの自主的な学習力を身につける上で、各学校での取り組みと経験を共有する重要な機会となった。金鐘哲教員(四日市朝鮮初中級学校)は、「中2英語L・7における『将来の夢』のスピーチの段階的な指導について」と題して自身の研究結果を発表した。 

 その内容は、生徒自身が「自分の夢」をより真剣に考える上で、莫大な情報が氾濫するインターネットをうまく利用し、スピーチ文を作成するために必要な情報を見つけ、作文、発表の練習を重ねる過程での指導体験を語ったもの。

 現在、あらゆる分野で活躍している在日同胞を例にあげ、その紹介文を作成しながら習った英文法を駆使すると同時に、「夢」を実現するためには人一倍努力することの大切さを実感するよう指導していった。また、スピーチ文の構成内容をより具体的なものにするための方法として、「現在の自分マップ」と「10年後の自分マップ」を作成し、10年後を見据えてどんな人生設計を立てるのかを具体的に考えさせるなど、ユニークな取り組みが紹介された。

 金教員の発表は、生徒の「将来の夢」に関するスピーチの指導が、生徒たちを民族意識を持った立派な人材として育てる上で大事な機会であり、教科書の内容と言語技能を同時に習うことで、教育教養の両側面での向上が見られることを証明したものとして評価された。

 英語分科では、学区制別の研究をさらに進め、生徒たちの統合的な英語力、学習能力を高めることに力を注いでいく方針だ。

社会分科 「観」形成に繋げる取り組み

生徒の人生観形成について熱い議論が交わされた

 社会分科では、各学校で積みあげてきた研究成果と、第20回教研で提示された研究方向に基づき作成された、初・中・高合わせて22編の論文が発表された。

 分科討議を通じて参加者たちは、社会科目が持つ特性と関連して、新たな時代の中で社会科の授業に要求される歴史認識や、社会をどう観るかなどという方法論などの授業内容について熱心に話し合った。

 金有燮教員(北海道朝鮮初中高級学校)は「高3現代朝鮮歴史の科目で、試験方法改善に関する研究」について発表した。

 同研究は、2002学年度から徐々に開始され、主に08、09、10学年度の3年間に、高級部3年生29人を対象に行ったものだ。

 金教員は、社会・歴史の授業が単に「暗記」科目ではなく、生徒一人ひとりの「人生観」を育てる礎になるよう、授業で学んだ断片的な知識、短期的な記憶を脈々とつなぎ、長期的な記憶として残るよう工夫した。全面叙述試験は、期末試験、中間試験、月末試験の、年間8回に渡り行われ、小論文は学期に1回(年間3編)、レポートは2週に1回(年間15編)実施し、試験方法の改善を試みた。

 発表後は、「個人の『観』を試験でどう評価するのか」「文章作成の指導方法」「小論文、レポート作成を導入した授業方法や授業時間をどう配分するのか」などの熱い論議が交わされた。

 朝大政治経済学部の李俊植講座長は、「すべての論文が、これまでの経験の蓄積に基づいて着実に高いレベルに達していたと思う。授業はあくまで生徒が主体になるべきであり、その成果を正しく評価してあげることが大切。形容詞的な表現で『観』を強要するのではなく、生徒が自分の力で考えるよう、正確な知識を提供することが大切である」と述べた。

 今後の課題について分科会では、児童、生徒たちの世界観を形成するにあたって、生徒たちを取り巻く環境の変化に沿った、授業法のさらなる改善を進める必要性について述べられた。

幼稚班分科 民族のリズムに親しむ

遊びで園児たちの能力を引き出した実践について語った

 幼稚班分科では、子どもたちの民族的情緒を育むためにはどうすべきかを中心テーマとして活発なディスカッションが展開された。そして、健やかな身体的発達と、園児受け入れ、2歳児の保育などに関するさまざまな取り組みなど多彩な意見交換も行われた。

 発表されたのは地方および中央審査を通過した6編の論文と1編の補充討論、6編の経験。そこには、朝鮮語教育、健康増進と「食育」、集団保育の効果など幅広い内容が盛り込まれた。

 朴仙京教員(京都朝鮮第2初級学校付属幼稚班)は、「音楽リズム活動を通して子どもたちの協調性と集中力を育てた経験」について発表した。

 幼稚班生活において音楽は欠かせない要素となっている。一日の園生活を通じて音楽を身につけている園児たちの中には、歌が好きな子もいれば、その時々の歌を機械的に口ずさむ子どももいる。朴教員は、子どもたちが音楽に親しみ、表現する喜びを感じ、仲間と共に遊びを通して喜びの幅を広げること、そして朝鮮の民族リズムに合わせて歌い、踊る体験を通して、「発表会に向けた練習」ではなく、表現する楽しみを広げる体験づくりに取り組んだ。

 具体的な活動内容は、@歌うA叩くB動くC聞くD作るの動作を通して、「表現力」「集中力」「協調性」を育てようとするもの。動物の鳴き声をまねて4・3・2・8拍子のテンポを覚えたり、動物の絵を見てその都度鳴き声を変えたり、遊びの中で集中力を高め、音とリズムを表現し、仲間と楽しみながら活動する子どもたちの生き生きとした様子が映像で紹介された。

 発表を聞いた他校の教員からは、「注意点として、無理な発声による音声障害への配慮をしていた点に感心した。今後は私もオルガンの音量や速度に気をつけて指導していきたい」などの声が寄せられた。 (文−金潤順、尹梨奈、写真−盧琴順)

[朝鮮新報 2011.2.18]