「高校無償化」 自由人権協会が適用手続きの早期再開求め声明発表 |
手続き停止は行政手続法違反 社団法人自由人権協会は17日、「高校無償化法から朝鮮高校を恣意的に除外したり、その教育内容を経済的給付可否の判断材料とすることは、子どもの学習権に対する重大な侵害だ」とし、「朝鮮高校生への高校無償化法の適用手続を速やかに進めることを求める声明」を発表。菅直人首相、枝野幸男官房長官、高木義明文部科学大臣に送付した。 自由人権協会は、基本的人権を擁護するため、政治的立場を超え、市民として意見を表明し、重要な人権事件を支援するNGO。研究者、弁護士、ジャーナリスト、学生など様々な職業の市民らが活動している。 声明は、朝鮮高級学校の「高校無償化」法適用申請に対し、日本政府が朝鮮西海での砲撃戦を理由に審査手続きを停止させたことは、同法および関連法令に何ら定めがあるものではなく、「外交及び防衛上の観点からの一種の超法規的措置」であって、「行政手続法に違反することは明らかだ」とし、次のように指摘した。 行政手続法は、申請に対する審査、応答として「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければなら(ない)」(7条)と定めている。朝鮮高級学校はすでに申請を済ませ、申請が文部科学省に到達している以上、同省は遅滞なく審査を開始し、その諾否についての処分を行なわなければならない。したがって、同省が迅速に審査を行うことが出来るにもかかわらず、これを怠っていることは行政手続法7条に違反する。 声明は、「2010年度の就学支援金については、本年3月までに支給がなされなければ、朝鮮高校生は2010年度の同支援金の受給を受けられないこととなり、3年生についてはこの不利益は多大だ」と強調。「審査は直ちに、少なくとも1月下旬までには行われなければならないはずで、この期間を徒過すれば、処分を行なわないという不作為が、相当の期間が徒過したものとして違法となることは明らかだ」と指摘した。 声明は、「外交及び防衛という政治的な問題を、次代を担う子どもたちの教育に及ぼさせてはならない」とし、日本政府に対し、直ちに指定手続きの「停止」措置を取りやめ、申請手続を進めることを求めた。 自由人権協会声明全文 自由人権協会は、2010年3月25日、「高校無償化の対象となる外国人学校の選別基準に関する緊急声明」を発表し、朝鮮高校を恣意的に除外したり、その教育内容を経済的給付可否の判断材料とすることは、子どもの学習権に対する重大な侵害となる点などを指摘した。 高校無償化法は昨年3月31日公布され、同法施行規則が同年4月1日公布施行され、同月30日付文科省告示82により、「外国の学校の課程と同等の課程を有するもの」として、ブラジル高校8校、中華高校2校など計14校、及び国際教育認定機関の認める国際学校として計17校がそれぞれ指定され、2010年度の就学支援金が支給された。しかし、朝鮮高校については、新たに設けられた専門家による「高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議」において、高校無償化法を適用し指定対象とするかどうかが検討された。同会議は、8月31日「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について」を公表し、そこで「基準は、『専修学校高等課程』との均衡を図る観点から、原則として『専修学校高等課程』に求められている水準を基本とすることが適当である」「(他の外国人学校の)指定に当たっては、教育内容については判断の基準とせず・・・客観的・制度的な基準により指定している」として、「外国人学校の指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものであるということが政府の統一見解である」とした。 それを受けて、文部科学省は、11月5日、「(朝鮮高校の)指定に関する規程(文部科学大臣決定)」を公布し、その指定の基準及び手続等を定め、申請期限を11月30日とした。朝鮮高校10校はいずれも期限内に申請を済ませたという。 しかし、北朝鮮の韓国砲撃を受けて、11月24日、仙谷由人官房長官(当時)が、その指定に関する手続きを「停止することが望ましい」と発言し、ついで菅直人首相も「私から文科大臣に対して、(手続きの)プロセスを停止してほしい、と指示を出した」と報じられた。このことによって高校無償化の朝鮮高校生への適用は重大な局面を迎えたというほかない。 高校無償化法による就学支援金の受給資格を有するのは生徒又は学生であり(同法4条)、こうした政治的理由から不支給とすることは、その学習権に対する重大な侵害であることは明らかである。その法的問題点については、昨年3月の当協会の声明ですでに述べたので、ここでは繰り返さないこととする(別添声明参照)。本声明では、手続きの「停止」に関する法的問題について、次のとおり指摘したい。 今回の手続きの「停止」措置は、高校無償化法及び関連法令に何ら定めがあるものではなく、外交及び防衛上の観点からの一種の超法規的措置というほかない。 しかし、この「停止」措置が行政手続法に違反することは明らかである。すなわち、行政手続法は、申請に対する審査、応答として「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければなら(ない)」(7条)と定めている。この趣旨は、行政庁が速やかに審査を開始する義務を定め、申請に対する処分の迅速で公正な処理を確保しようとするものである。したがって、申請が行政庁の事務所へ到達すれば、行政庁は「遅滞なく」審査を開始する義務が生じる。朝鮮高校はすでに申請を済ませ、申請が文部科学省に到達している以上、行政手続法7条の規定にしたがって、同省は遅滞なく審査を開始し、その諾否についての処分を行なわなければならない。文部科学省が、迅速に審査を行うことが出来るにもかかわらず、これを怠っていることは行政手続法7条に違反する。 なお、高校無償化法に基づく指定に関する申請手続については法令上、処分をすべき期限は定められてはいないものの、2010年度の就学支援金については、本年3月までに支給がなされなければ、朝鮮高校生は2010年度の同支援金の受給を受けられないこととなる。ことに、3年生についてはこの不利益は多大である。したがって、審査は直ちに、少なくとも1月下旬までには行われなければならないはずである。この期間を徒過すれば、処分を行なわないという不作為が、相当の期間が徒過したものとして違法となることは明らかである。 外交及び防衛という政治的な問題を、次代を担う子どもたちの教育に及ぼさせてはならない。当協会は、政府に対し、直ちに、朝鮮高校の指定手続きの「停止」措置を取りやめ、申請手続を進めることを求める。 2011年1月17日
社団法人 自由人権協会 [朝鮮新報 2011.1.18] |