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東日本大震災 同胞、日本市民の笑顔 被災地で炊き出し

復興に向け力を合わせよう

 東北地方では、被災した各県ごとに設置された総連緊急対策委が被災地の実情に即した救援活動を活発に展開している。対策委が行っている活動の中で好評なのが、焼肉など温かい朝鮮料理を提供する炊き出しだ。関東や近畿の同胞たちが材料を準備して被災地に駆けつけたケースもある。炊き出しの現場に同胞と日本市民を隔てるものはない。共においしく食べ、笑みを浮かべる炊き出しの場は、復興に向け力を合わせていこうという雰囲気に包まれている。

こぼれる笑み

岩手県大船渡市で行われた総連岩手県本部による炊き出し(金里映撮影)

 総連岩手県本部が主催する被災者への炊き出しが23日、岩手県大船渡市の上山公民館で行われた。同公民館では現在、張英敏さん(40)を含む約20人が避難生活を送っているが、この日は大船渡で被災した別の同胞たちも駆けつけ、炊き出しを手伝った。カルビにホルモン、キムチなどに加え、具だくさんの「ひっつみ」(岩手の郷土料理)など温かい料理が出され、好評を博した。避難所生活を送る人たち以外に、近所の住民らも訪れた。

 上山公民館で炊き出しが行われたのは、今回が初めて。大泉喜代子さん(55)は「みんな焼肉が大好き。在日の人たちが、おいしい焼肉を振る舞ってくれて本当にありがたい」と笑顔で話した。

 この日、総連岩手県本部の崔成守委員長(49)の朝鮮大学校時代の同級生たち3人が東京や神奈川からはるばる訪れ、県本部のメンバーとともに炊き出しを行った。その中の一人の朴正緒さん(46、東京都在住)は、16年前の阪神淡路大震災のときに兵庫へ赴き、救援物資の仕分けや炊き出しなどのボランティア活動を経験した。

 「テレビで被災地の様子を見るだけでなく、直接、何かしたいと思った。これからの復興は、なんといっても地元の人たちを中心に行われる。少しでも力添えできれば」

 大船渡市内の別の公民館で避難生活を送る朴東出さん(54)は、「遠くからも同胞が駆けつけてきてくれて、本当にありがたい」と感謝を述べていた。

相互扶助の精神

京都府青商会による岩手県大槌町での炊き出しを報じた岩手日報

 京都府青商会のメンバーらが18日、地震と津波の被害が大きかった岩手県大槌町にある避難所の城山公園体育館を訪ね、焼肉など500人分の食事を提供した。

 現地を訪れた京都府青商会メンバーは9人。総連岩手県本部と女性同盟本部の活動家、朝青東北地方委員会のメンバーらが手伝った。また宮城、青森、岩手から駆けつけた「焼肉塾」のメンバーたちも炊き出しに参加した。

 京都府青商会は3月27〜29日に6人で構成された第1次救援隊を宮城県と福島県に派遣した。当時、宮城県を訪ねたメンバーらは別働隊を組み、避難所生活を送る京都府青商会の金光烈副会長の叔父がいる大槌町へ向かおうとしたが、ガソリンを確保できず断念した。今回、金副会長は同級生と2人で岩手県を訪れようとしたが、青商会のメンバーたちは「一人はみんなのために、みんなは一人のために」の精神で相互扶助のパワーを発揮しようとチームを作り、総連岩手県本部への慰問と現地での炊き出しを行うことにした。

 京都府青商会の金義光会長(「焼肉塾」会長)は、同胞の団結力によって試練を克服していこうとする東北地方の組織と連係をとりながら活動することで「われわれ自身が勇気をもらった」と語る。

 一方、この日炊き出しを手伝った岩手県青商会の徐明秀会長は、「京都府青商会のエネルギッシュな姿を見て同じ世代としてとても刺激を受けた。岩手同胞社会の復興のため前だけを見て歩いていこうという気持ちが固まった」という。

 炊き出しに参加した70代のある日本人男性は、出身地の青森で在日朝鮮人との交流があったとしながら「被災した人たちの助け合いや復興に向けての取り組みで国籍による差別などあってはならない」と述べた。

 被災者のための炊き出しは宮城県でも行われている。14日には総連緊急対策委宮城県本部が仙台市宮城野区の住民約140人が避難生活を送る高砂市民センターで炊き出しを行った。宮城の対策委が実施する炊き出しはこれが3回目。この日は焼肉と野菜満載のトック、おにぎり、キムチなどを提供した。 

地元メディアも紹介

 京都府青商会が行った炊き出しは、IBC(岩手放送)などが放映した。また岩手日報や盛岡タイムズなどの新聞にも記事が掲載された。

 総連緊急対策委が行った炊き出しの模様は地元のメディアでも取り上げられ、国籍や民族の違いを超えた相互扶助の精神として広く紹介されている。宮城対策委が初めて行った炊き出しの模様は、TBC(東北放送)が3月20日に放映した。(李東浩 、金里映)

[朝鮮新報 2011.4.27]