top_rogo.gif (16396 bytes)

東日本大震災 「総連医療団」 被災地での活動報告

メンタル中心に幅広いケアを

 3月20〜21日、東日本大地震総連医療団のメンバーとして東北朝鮮初中級学校(宮城県仙台市)に行った。このたびの医療団は、医協東日本本部の呼びかけにより、医師である私と東京大学病院勤務の趙貞淑看護師とその長女、そして総連活動家4人の計7人で行くことになった。医療団は20日午前9時に総連中央本部を出発して一路仙台を目指した。

薬品確保が急務

同胞高齢者を中心に被災地で診察を行った総連医療団(左端が筆者)

 午後3時に東北初中に到着した。すぐに医療活動を開始し、寄宿舎に身を寄せている3人の高齢者をはじめ約50人の診療にあたった。血圧の上昇が見られたが大きな疾病はなかった。

 翌日、学校に避難することのできない7人の同胞高齢者を訪問した。余震や緊急地震速報が流れ続けるなか、医療団の訪問に安堵の表情を浮かべる同胞に対して、できるかぎりの笑顔と大きな声で丁寧に診療するようにした。

 しかしながら、心中はやるせなく、無力感でいっぱいだった。というのも、診療を再開した医療機関が少なく医薬品の入手が困難で、数日分しかもらえない状態だったこと、そして持参した薬の種類が限られていたからだ。

 極度の緊張と不眠による不安のため、血圧が上昇している同胞が多く見受けられた。薬品の確保が何よりも急務だったが、ライフラインが壊滅的な打撃を受けていたため、どうすることもできなかった。入手困難な薬があれば、東京の足立鹿浜病院から緊急に配送するよう直ちに手配した。

 学校が位置する地域は、沿岸に比べると津波による被害はないものの、独居の高齢者は地震による家具、家財の散乱で居住が困難な状況にあり、現地の活動家の勧めで10人ほどが学校で避難生活を送らざるをえないとのことだった。一時避難所となっている学校も校舎と寄宿舎が傾き、校舎は立ち入り禁止、使用できるのは食堂と寄宿舎の2棟しかない状態になっていた。

精神面の支援

 集団感染予防のための手洗いや洗浄不足が心配だった。震災の被害が甚大であることはメディア報道によって認識していたが、実際に目で見た被害の大きさは言葉で言い表すことなど到底できないほどに想像を絶するものであった。今後は、同胞の健康状態は言うまでもなく精神面、衛生面での支援が必要であると実感した。

 2日間、医療団としての支援活動を力の限りに行った。被災した同胞の健康状態はもとより、精神的に追い詰められている危機的現状を踏まえ、今後早期にメンタルケアを中心とした幅広いケアが必要であると実感した。今後は精神科医、保健師の協力が不可欠である。

 他方、今回の訪問先は仙台のみであったが、今後は被災地の状況が把握されていくにつれ、他地域への医療団派遣も提起されることが考えられるため、緊急の要請に迅速に対応しうる体制を整えることが求められると思われる。(金英宇、医療法人社団鹿浜会・足立鹿浜病院理事長)

[朝鮮新報 2011.4.6]