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巣立った君たちへ

 6日、東京朝鮮中高級学校を卒業した君たちへ。この一年、「高校無償化」実現のために共にたたかった先輩としてはなむけの言葉を送ろうと思う。

 「高校無償化」問題の未解決−。

 卒業式では、日本の首相あての要請文が読み上げられるという、異例の光景が見られた。本来ならば、新しい門出を祝福される場で、与えられて当然の権利を求めてなお訴え続ける君たちの姿に、胸がえぐられる思いがした。

 寒風吹きつける駅頭や40℃を超える猛暑の街頭に立ち、果敢に声を挙げる君たちの勇姿を、幾度となく目撃してきた。「当事者」として、どんな重圧にもひるむことのない、ひたむきなその姿は、誇らしくもあり、たくましくもあった。

 君たちが在学中に「無償化」制度は適用されなかった。しかし、その努力は決して無駄じゃなかった。

 君たちの送った日々は、普通の高校生が決して体験できない「特別な」ものであったに違いない。皮肉にも、その過程で得たものは「千金に値する」と言っていいほど大きかった。

 この間、日本政府の粗悪な対応や心ない人たちの言動に、絶望し心折れそうになったこともあっただろう。そんな中で、君たちの存在を尊重し、エールを送ってくれる日本市民がたくさんいることを実感したと思う。

 「無償化」問題のみならず、日本には人権に関する諸問題が点在している。在日朝鮮人として生きていく上で、君たちの「特別な」体験は、今後の大きな糧となっていくだろう。(裕)

[朝鮮新報 2011.3.15]