〈こちら同胞法律・生活センター〉 在日同胞の相談 複雑で難しい問題 |
Q:同胞法律・生活センターに寄せられる相談の中で一番多いのが相続問題だというが、なぜ一番多いのでしょうか? A:相続は遺産の分割をめぐり兄弟姉妹が骨肉の争いを繰り広げたり、絶縁したりと非常に複雑になりがちです。これは日本人の場合も同様で、家庭裁判所に提起される遺産分割調停の件数は年々増加傾向にあり、解決までの審理期間は概ね1年ほどだそうです。 植民地支配と祖国の分断という歴史的背景をもつ在日同胞の場合、相続は「分割」だけではなくより複雑で難しい問題をはらんでいます。相続人が南・北・日本に離散していたり、相続財産が南の故郷にもあったりと、相続人の確定や手続に必要な書類の準備に相当な時間がかかることがあります。また、日本の外国人登録法や戸籍法、そして南北朝鮮の国内法など、三カ国の国内法に関する広範な法律知識が必要なうえ、実は南の故郷に妻子がいたというケースもあり、日本人の専門家ではなかなか対応しづらいようです。センターに相続の相談が多いのはこのようなことも背景にあると言えるでしょう。また、実際のところ、日本人弁護士や司法書士、金融機関などから同胞の相続に関する質問や情報提供の依頼もよくあります。
Q:在日同胞の相続ではまず、どこの国の法律が適用されるのでしょうか?
A:日本の「法の適用に関する通則」によると「相続は被相続人の本国法による」(同第36条)と規定されています。朝鮮の対外民事関係法第45条では、「不動産相続については相続財産がある国の法、動産相続については被相続人の本国法を適用する。但し、外国に居住しているわが国の公民の動産相続については、被相続人が最終的に居住している国の法を適用する。…」と規定しており、また南の国際私法第 49条でも「相続は死亡当時被相続人の本国法による」となっています。 日本で永住者資格を持って暮らしているので日本の法律が適用されると思っている人もいますが、それは誤りです。また、外国人登録上の「朝鮮」「韓国」の国籍表示によって本国法が決まるわけでもありません。 在日同胞の場合、被相続人が北の法を本国法とする場合は上述の対外民事関係法(第45条)により日本民法が、南の法を本国法とする場合は「韓国民法」に基づいて相続が処理されます。いずれの国の法律が適用されるかによって相続人の範囲や法定相続分が異なってきます。 日本民法の場合、死亡した人に子や孫、その親がいなければ配偶者が兄弟姉妹とともに相続人になりますが、「韓国民法」では配偶者のみが相続し、兄弟姉妹は相続人にはなりません。法定相続分では、配偶者の相続分に大きな違いがあり、日本民法の場合は配偶者の相続分は子の数に関係なく常に相続財産の2分の1ですが、「韓国民法」では子の数により異なります。配偶者の相続分は子一人の相続分の1.5倍となり、子の数が多ければ多いほど、配偶者の相続分は少なくなります。(NPO法人同胞法律・生活センター事務局長 金静寅・社会福祉士) [朝鮮新報 2011.3.7] |