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〈リレーメッセージ×私たちのビジョン〉 「考える力、豊かな心」育てたい

千守日 神戸朝高吹奏楽部顧問 兵庫・加古川 35歳

 父母、兄弟、親せきがみなウリハッキョの教員という、「教育一家」で生まれ育った。そうした環境の中で、民族教育の良さを自然と感じていた。とくに父の生き方から大きな影響を受けた。毎晩学校から遅く帰宅しても、疲れた表情一つ見せない姿に知らず知らず尊敬の念を抱いた。

 幼い頃から体が弱く、激しい運動を控えなくてはならなかった。部活も自動的に吹奏楽部を選択。それをきっかけに音楽の世界に魅了されていった。その後、「自分が生きている社会は誰かが作ってくれる」と人任せなことはしたくないと思い教員の道を選択した。

 現在、神戸朝鮮高級学校吹奏楽部の顧問を務める。生徒と接するうえでもっとも心がけているのは、「朝鮮人として、何よりも人として大事なことは何か」ということを生徒たち自身が見つけられるようにすることだ。「『考える力と豊かな心』を持ってもらいたい。そのうえで音楽が果たす役割は大きいと思う」。

 兵庫県下のウリハッキョでは現在、40人以上の吹奏楽部出身者が教壇に立っている。生徒たちに教員になることを強要したことは一度もなかったが、常に質問を投げ、それに生徒が答えるプロセスを繰り返した。生徒たちにとって、それが自分を見つめ直す機会になった。

 演奏会やイベントを通じた日本市民との交流もその機会の一つ。生徒たちの演奏に感動し共感の拍手を送り、涙を流す日本市民も多い。演奏を通じて広がる朝・日交流の輪。その場で何を感じ、どう行動すべきなのか。きっかけさえあれば自分で考える力を生徒たちは持っている。

 さまざまな体験を通じて多くのことを感じ、「考える力と豊かな心」を持った生徒たちが各地へと広がり、その彼らがまた次世代を育てていく。日本市民との音楽交流を通じて在日同胞に対する理解を深め、同胞たちが住みやすい社会を築いていく。

 すべては人材の育成から始まる。この活動を各地の教員、同胞たちと連帯しながらさらに広めていきたい。

[朝鮮新報 2011.1.12]