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「鬼上司」の教え

 世の中すべて自分の思い通りになるわけではない。それはほとんどすべての人が感じていることではないだろうか。言葉通りネガティブな側面も持つが、私は最近このような状況になった時、一体これから自分に何が起こるのか、やや楽しみに思う気持ちが湧くようになった。

 10年ほど前、私は元の職場がとても気に入っていたが、本来転勤することになっていた同僚が子育て中ということで通勤時間が考慮され、独身だった私が代わりに転勤になった。転勤先には「鬼上司」がいるとの評判だった。案の定、私はその上司にマークされた。物言いが強すぎて反感を買いがちな上司であったが、本業の技術には若い私にも目を見張るものがあった。

 当時の未熟な私は、あまりにも否定してくる上司を避け、遠くでその技術をこっそり盗もうとしていた。また、なぜ私が同僚の代わりに転勤になってしまったのだろうと不満に思うこともあった。1年後、その上司が転勤になった。当時の私は正直ほっとした。やはりストレスはない方が楽だ。

 その後、時が経ち、私の本業のやり方は大きく変わっていた。そして、今の方が以前より断然いいと自分でわかる。もしあの上司に会っていなければ、今とはまったく違うやり方のまま時を過ごしていたと思うと、あの上司に会えて本当に良かったと素直に思う。今なら小言も聞き流して、自分からもっと教えを乞うだろう。

 新しく学ぶことは今の自分の範囲外のことだからこそ、思いがけず自分に近寄ってくる。一見思い通りにならない形で。そんな風に思うようになった。(崔賢姫、理学療法士)

[朝鮮新報 2010.12.17]