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本屋に行くと必ず料理本コーナーに立ち寄る。 最初に夢中になったのは、かの有名な栗原はるみさんであった。料理の盛り付けや器を選ぶセンスに傾倒した。20代の10年間は彼女のレシピをたくさん真似した。 30代になって、その出会いに匹敵する料理家を見つけた。行正り香さんである。彼女の料理本で好きなところは、栗原さんとはまた違ったセンスの良さと、とてもお洒落で凝って見えるのに作りやすいレシピ、それと彼女のエッセイだ。 中でも一番のお気に入りは、何でも期待してはダメという考え方についてのエッセイだ。たとえば、相手に何かしてもらおうとか、英語を習い始めたからすぐ話せるようになるとか、料理を作り始めたからすぐ上手に作れるとか、そういった何かを期待するパワーは無駄だから、今自分ができることを一歩一歩やることが大事だと、彼女のお母さんがよく言っていたそうだ。 仕事でも習い事でも、それこそ料理でも、そうそう簡単にうまくはならない。必ず何度も失敗する。ただ、私はこのエッセイを思い出すようになってから、予定していた仕事量を終えられなくても、それほど出来がよくなくても落ち込まなくなった。すると、その落ち込みにパワーが奪われない分、肝心な所に少ないながらもパワーを向けられるようになった気がする。そうすると、やはりそれは積み重なってゆっくりだけど少しずつ自分の力になっていっているのを実感する。(崔賢姫、理学療法士) [朝鮮新報 2010.11.5] |