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「うちの子」

 オモニたちとは、集まれば、きまって家庭の愚痴や不満をこぼすものだ。その中の一人であるオモニのこぼす不満は、いつもアボジに関することである(大抵の家庭のオモニたちもそうであろうが…)。

 「アボジが言う『うちの子』って誰のことやと思う? ハッキョの学生たちのことよ。ハッキョの心配ばかりで家庭のことなんか二の次なんやから」

 大学の寮で生活する今となってはほとんど聞かなくなったものの、以前オモニはこんなことを言いながら、ウリハッキョの校長を務め「家庭を省みない」アボジに不満をこぼしていた。

 しかし、私は鮮明に覚えている。幼い頃私に、前日に見た夢の話をしながらオモニはこう言った。「夢の中でいろんな人が海で溺れていてね。オモニは真っ先に、うちの子じゃなく、他の子どもたちを助けたんよ。だって、うちの子はまた他のオモニたちが助けてくれると思ったから」

 まだまだ幼かった私にとってその話はあまりのショックで、オモニは意地悪な人なんだと思い込んでしまった。むろん、オモニの気持ちを察するにはあまりの幼さであったことは言うまでもない。

 そんな私は22歳になった今、同胞社会とはこういうものなのではないかと思うようになった。みんなが互いを尊重し、互いに助け合う「相互扶助」の精神。

 アボジもオモニも、自分たちの言った言葉を忘れているだろうけれど、私はこれからも、2人の共通の「『うちの子』観」を受け継いでいきたいと思っている。(金賢雅、朝大研究院生)

[朝鮮新報 2010.8.21]