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身をもって知ったこと

 先日、初めて訪れた歯医者で若い担当医に当たった。一生懸命対応してくれるのだが、治療中「あれ?」「あ!」という声を出すから、こちらは不安でたまらない。親知らずを抜いた方が良いということになったが、歯根が神経に近いので痺れが残る可能性があるとのこと。どうにも処置を受ける気にならなかった。抜歯を行ってくれる先生は別だということで再度説明を受けた。内容はほぼ一緒だったが、これが不思議と処置を受ける気持ちになった。

 同じく病院で働く者として、この体験は人ごとではなかった。2人とも誠意をもってきちんと説明してくれたが、経験から来る自信が違った。言葉の端々に滲み出る自信がニュアンスとなって伝わってくるから、こちらに信頼感が湧いてくるのがわかった。一方、私は自分が新人のときの担当患者さんの顔を思い出した。明らかに慣れない様子の自分に担当を任せてくれた患者さんとご家族。数年経つと、もっとこうした方が良かったと胸が痛むこともある。だが確実に新人の頃より進歩した自分がいる。それは一重に、経験から学ぶことが多い。そうやって長い時間をかけて一人前になっていくと思うと、あらためて担当させてくれる患者さんとご家族のおかげだという感謝の気持ちを禁じえない。もちろん、患者さんにとって治療は一発勝負。すみませんでは済まない。

 今回の若い先生は自分が迷った時は、必ず上司に相談していた。そういった姿勢は見習いたいと思った。でも…やっぱり「あれ?」「あ!」は言わない方がいいかな。(崔賢姫、理学療法士)

[朝鮮新報 2010.8.6]