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「育児=育自」

 先日、家族で「大哺乳類展」を見に、国立科学博物館まで足を運んだ。博物館のすぐ隣には動物園があるが、展示されているサイの角に触れたり、動物のはく製を間近で見ることができるのは博物館ならではの楽しみ方だ。哺乳類の誕生から現在にいたるまでの道のり、たくさんの生物の生態など初めて知ることが多く、とても満足できる内容だった。

 そんな中でもっとも興味深かったのは、哺乳類の暮らしの特徴が「子どもが親に依存して育つ」ところにあるということだ。哺乳類は母親が子どもにお乳を与え、父親が食べ物を運んでくる。そして、触れ合い、嗅ぎ合い、鳴き合い、見合うコミュニケーションを通して親子の愛を深めていく。これは人間の子育てと酷似している。

 ところが最近、人間界では親が子を虐待するというニュースが後を絶たない。「しつけ」という口実のもとあざができるほどたたいたり、泣き止まないからと激しく揺さぶったり、満足に食事を与えなかったりと極めて陰惨な事件が続いている。人間は動物の持つ本能を忘れつつあるのか。ニュースを見るたび胸が痛む。しかしこれは決して他人事ではない。育児をするうえで、イライラしてつい大声で怒ったり、時には手をあげてしまったというようなことは多くの親が経験するもの。そう、誰もが加害者になりえるのだ。

 動物も、親は子どもを育てることによって成長するのだという。「育児」=「育自」。わが子を抱きしめ、一緒になって喜び、愛情を伝えながら、一人前の親になっていきたい。(李順華、主婦)

[朝鮮新報 2010.5.10]