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自分の心に耳を傾けて

 「努力で幸せになれますか」

 お昼時間に立ち寄った本屋で、何とも悩ましいタイトルが目に飛び込んできた。思わず手に取ってみると、勝間和代VS香山リカ―経済評論家と精神科医、今、話題の二人による対談集だ。タイトルの下に不安時代の幸福論≠ニある。

 なるほど、派遣切り、失業、貧困、格差…不安が日増しに膨らんでいくこの世の中で、「どうすれば幸せになれるか」という問いは誰にとっても切実だ。

 一億総中流と言われた時代は遠く過去のものとなり、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しく―人間が幸せになるために社会は発展してきたはずなのに、「なぜ?」という理不尽な思いがつのる。

 「幸福とは心が平静なことであり、健康で負債がなく心にやましいところがない」とは『国富論』で有名なアダム・スミスの弁。富の追求こそが人間の幸福との主張かと思いきや、予想に反するそのシンプルな答えを最近知り、共感を覚えた。

 が、人生は思い通りにいかないことだらけだ。ちょっと気を抜くと、たちまち不幸せスパイラル≠ノ飲み込まれてしまう。「心の平静」への道のりは、富や名声を手に入れるより遠く険しいものかもしれない。

 それでも、日頃の心がけで少しでも幸せに近づければ、と思う。他人と比べない。妬み、恨み、憎しみなど負の感情は心に溜め込まない。周りに惑わされず、自分の心に耳を傾けながら、じっくり、ゆっくり、幸せをみつけていこう。(鄭潤心、会社員)

[朝鮮新報 2010.2.12]