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平和への祈り−平山郁夫さんの信念

 ユーラシア大陸に流れる悠久の時を詩情豊かに描いた日本画家、故平山郁夫さんの代表作70点を集めた第16回秘蔵の名品アートコレクション展「平和への祈り」(8月4〜29日、ホテルオークラ東京)を鑑賞した。

 うだるような暑さのなかでも、連日、会場には多くの人々が足を運び、生涯を世界の平和と東西文化の架け橋として多大な功績を収めた平山氏の活動を偲んでいた。

 15歳のとき、広島で被爆し、画家になってからも、白血球の減少で何度も生命の危機を乗り越えた。そうした日々の中で、平和への祈りをこめてシルクロードを描いた。玄奘三蔵の旅を追って中東から中国、チベット、敦煌とシルクロードを130回以上旅し、仏教東漸の道を実感としてとらえ、絵筆に込めた。

 さらに、朝鮮の高句麗壁画古墳をユネスコの世界遺産に登録する運動も、熱心に支援し続けた。訪朝は13回にも及び、何度も現地に足を運んだ。04年、世界遺産登録実現後も保存を支援し続けた。会場の販売所では、平壌の壁画古墳の女性案内人をスケッチした絵葉書も置かれていた。

 作品を眺めていると、平山さんの生前の声が聞こえてくるようだった。「平和のためには人知を尽くす以外にない。文化面の風通しが生まれ、日朝正常化へのステップになることを願っている」と。文化という回路を通じて、対話を重ね、どんな壁をも乗り越えようと、平和への道を歩み続けた信念の人であった。(粉)

[朝鮮新報 2010.9.3]