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笑いと涙、苦労と希望−家族史を知る

 人にはドラマがある。そう感じることがある。

 8面で連載中の「100年を結ぶ物語」の取材を通して、この100年の間の同胞たちの笑いと涙、苦労と希望を垣間見たような気がした。

 東京朝鮮学園の金順彦理事長に会って父・在憲さんの話を聞くうちに、今は亡き父のことをとても詳しく語っていることに驚かされた。聞くと、「父の自叙伝が残っている」という。後日、「自叙伝」を借りて読んでみると、そこには在憲さんの苦労と軌跡が細かく綴られていた。「小さな工場で働く者でさえ迫害と蔑視を受けるのに、日本各地の大小企業、工場で、同胞たちはどれほどひどい仕打ちを受けているだろう。そう思うと、悔しさで胸が張り裂けそうだった」…。

 在憲さんの体験は、祖父母への記憶へとつながっていった。在日3世の記者は幼い頃、1世の祖父母の近所で育った。学校から帰り祖母の家へ寄ると、ハルモニはジャポニカの学習長を開いて、たどたどしいひらがなで、都はるみの歌を書き写していた。そばに置かれたテープレコーダーからは、「アンコ椿は恋の花」が流れていた。

 学校に通えず、初級部生の孫に歌詞を確認してもらっていたハルモニ。あの頃はハルモニの半生について深く知ろうともしなかった。

 「韓国併合」から100年−。在日同胞の歴史を振り返るとともに、家族史を振り返ってみようと考えた。

 今年、記者の父は70歳を迎える。まだまだ健在。今のうちに祖父母のこと、父のこと、母のことをどんどん聞いてみよう。そして、息子に伝えようと思う。(潤)

[朝鮮新報 2010.8.21]