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70年代、米国とベトナムの関わりを描いた「ベスト&ブライテスト」を発表し、ニュー・ジャーナリズムの旗手としての地位を確立したデイヴィッド・ハルバースタムが、最後のライフ・ワークとして選んだテーマは「朝鮮戦争」だった。その著書は、彼が交通事故で亡くなった2007年に米国で出版された。日本でも昨年、翻訳版がでた ▼米国人にとって朝鮮戦争は、第2次大戦とベトナム戦争の間にある「忘れられた戦争」だといわれた。ニューヨーク・タイムズの記者としてベトナムの戦場を取材した経験があるハルバーススタムは、最後の著書で20世紀後半から現在に至る米国の海外介入の原点が、この「忘れられた戦争」にあると言いたかったのかもしれない。1953年の停戦協定締結は戦争の終わりではなかった。米国は朝鮮半島における膠着状態からベトナムの失敗へと進んだ ▼米国人作家が描く「戦争」は、分断を強要された朝鮮民族の体験に焦点をあてたわけではない。彼の著作は、大国の対立と冷戦の深まりに関する歴史物語になっている。戦闘場面の記述も米軍と中国軍の衝突が大半を占めた。マッカーサー、リッジウェイ、彭徳懐が司令官として登場する ▼米国と中国は自国が関与した戦争を終わらせようとはしなかった。朝鮮半島の分断と対立の構図は続いた ▼平和協定会談開催を停戦協定当事国に提案したのは大国ではなかった。38度線の戦火から60年、朝鮮が戦争終結の動きを起こした。ハルバースタムが注目した主役たちは主導権を取ってるようには見えない。(永) [朝鮮新報 2010.2.19] |