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〈心に残る言葉 2010年を振り返る〉 スポーツが生んだ実践力 「未来の舞台に立つのは君」

ブラジル戦で鄭大世選手のアシストからゴールを決めたチ・ユンナム選手(6月、W杯南アフリカ大会)

 スポーツが多くの人の心を動かし、実践活動へとつなげる様子を目撃した2010年だった。在日同胞が今年ほど同胞スポーツニュースに触れ、喜んだ年はそう多くはないだろう。

 登山協会は結成15周年に際し、各地の同胞登山協会と力を合わせ、昨年から目標にしてきた「日本百名山」を今年すべて制覇した。各地で数多くの登山愛好家が増え、地域協会の枠を越えた新たなつながりが確認された。

 バスケットボール協会は全般的なレベル向上のための「選手登録制度」を昨年からはじめ、老若男女の選手の名前、年齢、身長、体重などを名簿化し、地域別、学校別の傾向を分析し、技術面での強化材料を整えた。

 囲碁協会は結成20周年を迎え、幅広い世代に囲碁を普及していくため尽力しており、朝・日親善大会、ワンコリア囲碁大会など総連に属さない同胞との交流試合も継続して開催することで、「囲碁を通じたブレのない交流」を誇示した。

 各地の体育協会もまた、スポーツを通じ数多くの同胞を網羅した。

 大きな成果をあげた同胞スポーツ関係者たち。取材現場ではいつも、交わされる話題があった。ボクシングとサッカーに関するものだ。その話題を聞いていると、朝鮮学校卒業後、世界のスポーツ界にチャレンジし、成果を上げた選手たちの活躍にたどりついた。

 ボクシングの李冽理選手は10月に世界王者になった。サッカーの安英学、鄭大世選手はW杯に出場した。二つの快挙を前後して、彼らを応援する会も活発になった。

 同胞社会は同胞スポーツ選手が世界で活躍できるということを体感した。その余波は、朝鮮学校に通う生徒たちにも届いた。

 「未来のW杯の舞台に立つのは君たちだ」

李冽理選手が世界戦初挑戦で王座を奪取し歓喜の声を上げる同胞ら(10月、東京)

 今年8月、大阪で行われた第32回在日朝鮮初級学校学生中央サッカー大会(コマチュック大会)の会場にはこのような横断幕が掲げられていた。大会に出場した生徒らは、6月に南アフリカで行われたW杯を地域の応援会、自宅のテレビなど、あらゆる媒体を通じ目撃した。その後、「ぼくも安英学、鄭大世選手のようになりたい!」と興奮しながら、自らの夢を実現するための具体的な道筋を模索するようになったという。学父母たちも「時代が変わった」と世界を見据える子どもと教員への激励の声をいつになくたくさんかけていた。

 ボクシング部に属する朝高生らも李冽理選手の活躍に大きな刺激を受けた当事者たちだ。「第二の李冽理を育てたい」。教員たちも新たな夢を描くようになった。

 朝鮮学校に通い、努力を惜しまなければ、夢は実現できるということが具体性を帯びてきた。それは、2つの競技に限定されてはいなかった。

 「空手部門において朝鮮学校に通う子どもたちに夢を与えたいと思うようになった」

 第16回アジア競技大会に朝鮮代表として出場した朝大の康成志選手はハキハキと話した。彼もまた、同胞スポーツ選手の活躍を自身の飛躍へとつなげ、実践していこうとする一人だった。

 在日同胞の活躍がスポーツ以外の分野にも広がった。自らが属する分野に置き換え、「私も李冽理、鄭大世トンムのようになりたい」と実践活動につなげようとする同胞が増えた。

 日本政府の民族教育に対する露骨な日本政府の差別、朝鮮に関する偏向報道が、より顕在化した今年、朝鮮学校に通う生徒らはインターハイ、選手権大会をはじめとする大会で活躍し、同胞スポーツ関係者もそれを目撃した。日本の高校生、スポーツ関係者の「『無償化制度』の適用を先送りするのは異常」などの声も聞かれ、友好親善の輪も広がった。

 年末年始、大阪朝高ラグビー部選手らが「全国」の舞台で大活躍してくれるだろう。そのとき、民族教育やスポーツが持つパワーの大きさを人々は再確認するはずだ。(東)

[朝鮮新報 2010.12.22]