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恩師、梁学哲先生の目に涙 5%の可能性信じ

 李冽理選手がボクシングを始めた大阪朝鮮高級学校で、当時ボクシング部監督を務めていた梁学哲さん(現・大阪朝鮮第4初級学校校長)は、この日、世界の頂点に登りつめた教え子の姿を、リングサイドから見つめていた。梁さんは試合中、一度も椅子の背もたれに背中をつけることなく、李選手の動き凝視し続けていた。

 李選手の攻撃がチャンピオンの左目を切り裂いた5ラウンドから、梁さんの声が次第に熱を帯び始めた。「応援する声が聞こえているかはわからないが、学生時代から育ててきた冽理が世界チャンピオンを目指して戦っている姿、ラウンドが進むごとに勝てる可能性を大きくしていることに、知らず知らずに声も大きくなったのかもしれない」と、梁さん。

 勝利の感触を得たのは、8ラウンドだったという。「冽理がダッキング(上体を前に屈めるようにして相手のパンチをかわす防御技術)から攻撃に転じるようになり、試合の主導権を握ったと確信した。チャンピオンに焦りがあるように感じ、勝てると思った」。

 試合中、梁さんのまぶたに浮かんだのは、高校時代に必死に練習についてくる李選手の当時の姿だったという。「ボクシングを始めた当初、フィジカル的に強かったわけでも、運動能力が抜きん出ていたわけでもなかったが、本当によく走り、懸命に練習に食らいついてきた。そんな彼の姿が浮かび上がってきた」。最終ラウンドの開始ゴングが鳴り響くと、梁さんの目にはすでに涙が浮かんでいた。

 試合前、チャンピオン有利の予想は、李選手の応援席からもささやかれていたほどだった。「95%無理でも、5%の可能性を信じて戦える力が、冽理にはあった。その強い気持ちがあったから、チャンピオンになれた」。

 「新チャンピオン誕生」のアナウンスを耳にした瞬間、「本当に夢のようだった」という。「大阪朝高、そして朝鮮大学校を卒業して世界の頂点に登りつめた冽理を誇りに思う。今年6月に行われたW杯では、3人の朝鮮学校卒業生が、世界に挑んだ。そしてボクシングでは、今日、冽理が世界チャンピオンに輝いた。彼らが学んだ朝鮮学校のすばらしさを、世界に知らしめられたと思う」。(茂)

[朝鮮新報 2010.10.4]