朝鮮建国62周年記念 在日朝鮮学生中央体育大会 10競技で熱戦 |
朝鮮建国62周年を記念する在日朝鮮学生中央体育大会が1〜5日、東京駒沢オリンピック公園総合運動場と関東、近畿地方の各競技場で行われた。陸上、サッカー、バスケットボール、テニス、バレーボール、卓球、空手、ボクシング、柔道、ラグビーの10競技で熱戦が繰り広げられた。 1日には開会式があり、総連中央の「益柱副議長兼民族圏委員会委員長、金淳赴ウ育局長、大会関係者と生徒らが参加した。今大会には、今年も日本の「全国大会」や国際スポーツ大会で活躍した選手をはじめ、朝鮮学校の初中高級部の生徒らが多数出場した。 母校の名誉かけ白熱のドラマ 在日朝鮮学生中央体育大会では毎年、数々のドラマが生まれる。在日同胞の権利獲得運動や日本市民の応援によって1990年代初頭から日本の「全国大会」への門戸が開かれたが、中央大会は現在も朝鮮学校の生徒らが母校の名誉をかけ勝利を目指す切磋琢磨の舞台となっている。大会に参加した各地の生徒ら2000余人は今年も、日ごろの厳しい部活動の練習で得た強靭な精神力を発揮した。
サッカー
サッカー競技は1〜3日、駒沢第2球技場、駒沢補助競技場、東京朝鮮中高級学校で中級部、朝鮮大学校で高級部の試合があった。 中級部決勝は、東大阪朝鮮中級学校と東京朝鮮中高級学校の対決となった。東大阪は序盤から康英賛主将(中3)を中心に安定した守りや高い技術を見せたが、東京も金常徳主将(中3)にボールを集め対抗、得点機をうかがった。 今年の「全国中学校サッカー大会」16強である東大阪は後半に地力を発揮。11分、身長183センチのボランチ、金柱英選手(中3)が金裕記選手(中3)からのフリーキックに頭で合わせ、先制弾を決めた。両チームの当たりが激しくなったが、東大阪は15分に東京のミスを見逃すことなく辛泰樹選手(中2)が素早い動きでシュートを決め、点差を広げた。東京は終了間際の26分に洪将星選手(中2)の得点で1点を返したものの、東大阪はそれ以上の追加点を許さなかった。 2年ぶり18回目の優勝を決めた東大阪の康主将は、中央大会での優勝が「全国大会」16強の価値であると自身に言い聞かせてきた。大会関係者の高い注目、周囲の期待など、プレッシャーもあったが、26人いる3年生全員が大会に出場するなど、チームの特徴である一体感をこの大会でも充分に発揮した。部員全員がともに喜ぶ姿に、朴秀勇監督も「克服すべき課題もあるが、中央大会ならではの球際での激しさに打ち勝ち、生徒は最後までやりきった」と目を細めた。 一方、東京の金主将は、「東大阪は体も大きく声が出ていた。それでも勝ちに行こうという意識が終了間際の得点につながったんだと思う」と振り返った。 大会に出場したチームのなかには「中央大会で大きな成果を挙げよう」と奮闘した合同チームの姿もあった。茨城朝高学区チームは茨城、群馬、東北、福島、新潟の選手ら23人で構成された。大会では予選リーグで4連敗。それでも選手らは持てる力を発揮したと達成感を感じていた。 朝鮮代表のW杯出場に鼓舞されたという尹成銖主将(中3、福島)は、「練習があるごとに仲間と会える喜びがある。この団結力を持続させ、茨城朝高サッカー部にみんなで入部し、日本の公式戦にも出場してみたい」と目を輝かせた。 一方、高級部では、決勝で東京に3−3の同点の末、PK戦を5−4とし、競り勝った大阪が優勝した。(東) バスケットボール
中級部男子、女子共に14チーム、高級部男子7、女子5チームが出場したバスケットボール競技は1〜3日にかけて駒沢屋内球技場(中級部)と駒沢体育館(高級部)で行われた。 3日に行われた中級部の決勝戦は男女ともに東京朝鮮中高級学校と京都朝鮮中高級学校のアベック優勝をかけた対戦となった。 中級部男子の決勝は6年ぶりに優勝を狙う京都と4年ぶりの優勝を狙う東京の戦い。 試合は康泰球主将(4番)が開始早々に3ポイントシュートを成功させ、流れを掴んだ京都が第1クオーターを21−5でリードした。 東京は第2クオーターからディフェンスを強化。相手を追う形でディフェンスからの攻撃のチャンスを生かしながらシュートを決めていくも、京都が点差を広げ80−45で圧勝した。 京都の朴漢種監督は「選手たちが一丸となり優勝を目指し練習してきた成果を惜しみなく発揮してくれた」と選手らを称えた。また「父母会が活発に活動してくれて物心両面で支えてくれた。選手、教員と指導者、父母が三位一体となってここまで来れたと思う」と目頭を熱くした。 一方、中級部女子の決勝は6連覇を狙う東京と初優勝を狙う京都の2年連続の顔合わせとなった。試合は接戦となったが正確なシュートで点を重ねた東京が54−40で勝利した。 東京の康未希主将は「6連覇を達成できてとてもうれしい。みんなが一つになり団結したから優勝できた」と喜びを語った。 高級部男子決勝は東京と神戸の間で行われ、101−86で東京が優勝。3位は94−68で神奈川を下した九州となった。 一方、高級部女子はトーナメント方式で行われ、全勝した東京が優勝した。 在日本朝鮮人バスケットボール協会の康勲会長は、「高級部は男女ともに東京が好プレーを見せた。中級部は各チームのレベルアップを見ることができた。特にノーシードのチームが躍進を見せた」と振り返った。 また今年、中級部男子競技に長野朝鮮初中級学校が初出場を果たした。康会長は出場チームが1チーム増えたことに関して、「バスケットの人気は高まるばかり。指導者講習会などを開き、大小の学校が共にレベルアップできるような取り組みにも力を入れていきたい」と語り、「バスケを通した愛校運動にも力を注ぎ、OBと在校生との心と心の繋がりを通して技術技量だけではなく、心の教育にも繋がる活動をしていきたい」と述べた。(盧) バレーボール さいたま市記念総合体育館で行われたバレーボール競技(1〜3日)。 中級部女子決勝では、和歌山初中が東大阪初中を相手に完勝した。部員数8人という中で、27年ぶりに悲願の優勝を勝ち取った生徒たちに、会場からは惜しみない拍手が送られた。 初級部4年時から、部活動にとりくんできた金春希主将は試合後、満面に笑みを浮かべていた。「仲間たちと練習してきた成果を存分に発揮できてうれしい。最後まで楽しく試合ができた」と話した。 この日、会場には和歌山から多くの同胞が応援に訪れていた。゙良伊選手(中2)のオモニ、姜京淑さん(43)は、自身が中級部3年のとき、部を優勝に導いた主力選手だったという。「娘が同じ舞台で活躍する姿を見て感慨深かった。つらい練習にも弱音ひとつはかずにがんばったかいがあった。本当におめでとうと言いたい」と、子どもの成長ぶりに涙を浮かべた。 一方、高級部女子では大阪と神戸の決勝戦に注目が集まった。今年度から神戸を率いるのは、朴信子監督。12連覇を狙う強豪・大阪の朴慶雅監督にとっては高級部時代のバレー部の恩師にあたる。白熱した「師弟対決」を制したのは大阪。見事なアタック力と、そつのないレシーブで伝統を守った。 朴慶雅監督は、「課題は多く残るが、『全国』私学選手権大会に向けて今後の練習に励みたい」と述べた。また、「恩師の率いるチームと戦うにあたり緊張もあったが、今後も手を取り合って在日バレー界の選手育成に努めていきたい」と話した。(未)
空手
2、3の両日にかけて東京スポーツ文化館(江東区)で行われた空手競技には、茨城、東京、神奈川、愛知、大阪、神戸、広島の高級部選手たちが出場した。男女ともに組み手と型の団体戦、個人戦がそれぞれ行われた。 総合成績では、男子は団体の組み手と型、個人型の部門を制した神奈川が、女子は団体組み手を制し、個人組み手でも1〜3位に入賞するなどした大阪が優勝した。 男子個人組み手の決勝戦は、3ポイントが与えられる大技の上段回し蹴りを互いに決めるなど接戦となった。相手の勢いある攻撃を冷静に見切り、僅差ながらポイントで上回った愛知の馬弘樹選手(高3)が優勝した。 「最後の大会なので全力を尽くそうと挑んだ。優勝できてうれしい。高級部の3年間、空手を通じ、技術だけでなく礼儀や道徳を学んだ。人として成長させてくれた」 朝鮮大学校に進学して空手を続けたいという馬選手。本大会での優勝は、スポーツ推薦入学に向けた関係者への大きなアピールとなった。(泰) ボクシング
高級部ボクシング競技は3〜5日、東京朝鮮中高級学校で開催された。東京、大阪、神戸の3校から今年度インターハイ出場選手ら7人を含む8階級、計26選手が参加した1部トーナメント戦にくわえ、2部オープン戦も行われた。 大会では、東京勢が躍進。4階級を制し、9年ぶりに団体優勝を果たした。 注目が集まったのはバンタム級の決勝戦。 インターハイ出場時から1階級あげて試合に挑んだ兪m選手(3年、東京)と、大阪朝高選手らを率いる宋英俊選手(高3)の「東西主将対決」となった。 試合は、序盤から気迫あふれる攻防戦が繰り広げられた。両者一歩も譲らないまま展開したが、リーチの長さと隙を見逃さない素早い攻撃で着実にポイントを重ねた兪選手に軍配があがった。 また、インターハイでベスト8の成績を収めた李炯東選手(高3、ウェルター級)も圧巻の強さで会場を沸かせた。金孔王選手(高2、神戸)と対戦した李選手は1R、固いガードから強烈な右ストレートを放つと、スタンディングダウンを奪い今大会で唯一のRSC勝ちを決めた。 朝鮮民主主義人民共和国国際審判員の梁学哲氏(大阪第4初級校長)は、大会を通じた印象を「インターハイ出場選手らを筆頭に高い水準で試合が行われた」と述べ、各朝高からインターハイに17年間連続出場しているが、「そうした成果の原点も、この中央大会にある」とあらためて大会の意義を強調した。 一方、この日会場には、朝大出身の日本フェザー級王者で、来月世界タイトルマッチ(スーパーバンタム級に挑戦)を控えている李冽理選手が応援に駆けつけた。 李選手は、生徒らの勇姿を見ながら「初心に戻れた。今後、朝高、朝大出身のボクサーたちが、在日ボクシング界をともに盛り上げていく存在になってくれれば」と話した。 大阪朝高の宋英俊選手は、卒業後、朝大への入学を希望している。「朝大でボクシングを続けたいし、同胞社会に貢献できる道を選びたい。進路はまだ未定だが、李選手やOBたちのように、何らかの形でボクシングに携わっていきたい」と目を輝かせた。 生徒らは競技後、東京中高の学父母が用意した料理をともにほおばった。(周) 卓球
卓球は1〜3日にかけて横浜市平沼記念体育館で開催された。中、高級部の選手たちが出場し、それぞれ男女別に団体戦、ダブルス、個人戦が行われた。 中級部女子では、京都の朴貴禮(中3)、貴沙(中1)姉妹が金メダルを獲得した。ダブルス、団体戦を見事制し、個人戦でも姉が優勝、妹が3位だった。 気迫と力強いスマッシュで押す貴禮選手に対して、妹の貴沙選手はバックドライブで相手を崩すのを得意とする。見事なコンビワークで、2人だけで団体戦を勝ち抜き、同じく滋賀初級を卒業し京都中高卓球部で活躍する先輩たちに続く3連覇を遂げた。 貴禮選手は「初級部時代に卓球に憧れ、練習を積んできた。男子や高級部の先輩と練習していることで強くなっているのかも。次は日本の大会でも一つひとつ勝利を重ねたい」と意気込みを語った。 一方、地元神奈川の活躍は大会を盛り上げた。神奈川中高中級部の卓球部は、部員が13人。毎日の朝と放課後の練習、土日の試合を地道に重ね力をつけた。1学期末試験ではクラブ別で2位の成績を収めるなど、文武両道の伝統を新しく築いてきた。普段は先輩が後輩を親切に指導し、試合中は後輩たちが声を張り上げ先輩を盛り立てた。 金修弘主将(中3)は「メダルは取れた(団体戦は男女とも3位)。次は後輩たちが必ず優勝してくれると思う。神奈川中高卓球部を強くしたい」と述べた。 選手たちは会場に近い神奈川中高で3日間、寝食をともにし、焼肉を食べながら交流を深めた。(鎬) 陸上 舎人陸上競技場で行われた今年の陸上競技では、神奈川朝鮮中高級学校の李美玲選手(高3)が、昨年優勝した100、200メートル、幅跳びで、今年も金メダルを獲得した。李選手はまた、2年連続で優秀選手にも選ばれた。 李選手は試合後、初級部からはじめた9年間の陸上生活を振り返り、「やめたいと思ったことは一度もない」と言い切った。「練習はつらいけれど、常に支えてくれる先輩や同級生、慕ってくれる後輩の存在があったからがんばれた。陸上は個人競技だけど、ともに助け合う過程で集団競技になると思う。感謝の気持ちを学んだ」とほほえんだ。 一方、初級部では今年も新記録がたたきだされた。幅跳び女子では、姜世羅選手(初6、南武朝鮮初級学校)が3メートル62センチを記録。前年度に更新された大会記録を5センチ上回った。 在日本朝鮮人陸上競技協会の崔世鎭会長は「大会を通じ、陸上の楽しみを教え、ひとりでも多くの愛好家を育てることが目下の課題だ」と述べた。(來) [朝鮮新報 2010.9.8] |