〈2010W杯〉 熱狂的な応援に沸く平壌 |
一般市民も大きな関心 【平壌発=姜イルク記者】朝鮮が44年ぶりに出場を果たしたサッカーW杯の開幕(日本時間12日)とともに、国内はW杯一色に染まっている。朝鮮中央テレビだけでなく、万寿台テレビ、教育文化テレビなども試合を放映。土日は、どこかにチャンネルを合わせれば常に放映されているわけで、サッカーファンにはたまらないW杯シーズンになっている。そして、朝鮮が出場する試合の日、ほとんどの平壌市民が早々と帰宅し、テレビの前で熱烈に応援した。
好奇心かきたて
サッカーが国技の朝鮮には熱烈なサッカーファンが存在する。国内の大会やリーグ戦が行われるスタジアムにこまめに足を運ぶ愛好家は少なくない。また4年に一度のヨーロッパ選手権やW杯のテレビ視聴率も高い。 昨年、長らく低迷してきた自国のチームが1966年のイングランド大会以来44年ぶりの本大会出場を決めてからは、愛好家だけでなく大勢の市民が大きな関心と期待をふくらませてきた。 とくに今年6月に入ってから、体育新聞などの専門紙だけでなく平壌新聞などの一般紙にも朝鮮代表に関する国外専門家の分析や朝鮮と同じ組に入ったブラジル、ポルトガル、コートジボワールの戦力評価などが掲載された。また、サッカーの歴史や豆知識的な記事も紹介され、市民の好奇心をかきたてた。 開幕直近の9日には、遠征先での強化合宿の様子などがテレビで報じられ、期待はさらに大きくなっていた。 閑散とした街
W杯の試合は、毎日午後8時半以降から録画放映されている。 開幕以降、多くの市民が早めに帰宅して家族らと試合をテレビ観戦した。いつも込み合う地下鉄、バス、路面電車は、午後9時以降、空席が目立った。 ある衣服工場では、従業員らの要望に応え、午後8時前に作業を終えて帰宅させる措置が取られた。「(早く帰宅するために)ノルマを達成するための能率が上がり、生産実績も伸びている」とは責任者の弁。 16日早朝(平壌時間)に行われた対ブラジル戦の結果をすでに知っている市民が少なくなかったが、それでも多くの市民は同日午後8時半から録画放映された試合を見るため、足早に帰宅した。 熱気が頂点に達したのが21日午後8時半から生中継された対ポルトガル戦だった。44年前の雪辱とベスト16進出への可能性をかけた試合を見るため、万全の準備をした。 昨年6月にもイランとのW杯アジア地域最終予選が生中継されたが、関心度はその比ではなかった。 さまざまな路線のバス、トロリーバスの停留所が集中し、近くに地下鉄駅もあっていつも込み合う平壌大劇場付近は、午後8時過ぎから閑散としはじめ、8時半を過ぎてからは通行人、一般車の姿がほとんどなくなった。 「生中継」で市民らが思い起こすのは、1979年、平壌で行われた第35回世界卓球選手権の女子シングルスだ。33回、34回大会で連続優勝した朴英順選手の3連覇に注目が集まり大いに沸いた。朴選手は惜しくも優勝を逃したが、「熱狂的な応援のあまり心筋梗塞を起こす人が続出した」と語り伝えられている。 今回も、心臓が弱いと自称する人に事前に薬を飲むよう勧める声が行き交っていた。 市民らはブラジル戦での善戦で、対ポルトガル戦を前に意気揚々としていた。 予想外の大敗に市民らはショックを隠せないでいたが、関心がさめることはなかった。 さまざまな反響 今大会期間中、サッカー好きな一般女性らの日常会話にもW杯が上がっていた。専門知識はなくても、「初戦みたいな戦法を貫くべきだ」などと熱く語る中年女性らの会話が各所で聞かれた。 話題を独占したのは鄭大世選手の涙だ。愛国歌を歌いながら涙を流す姿は、「在日同胞選手の愛国心に心を打たれた」などと人びとに感動を与えていた。 また、自国の結果だけでなく、南朝鮮の競技結果にも関心が高かった。 ある市民は、「同じ民族が負ける姿を喜ぶ人は誰もいない。憎いのは、同族を敵視する李明博とその一味だけだ」と話ながら、朝鮮とともに南の試合も応援していた。 朝鮮半島の緊張状態に「一触即発の危機」がささやかれているが、6月の平壌はW杯一色。市民らは競技結果に一喜一憂し、おおいに盛り上がっている。 [朝鮮新報 2010.6.28] |