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〈本の紹介〉 「韓国併合100年」 朝鮮半島戦争の危機を読む−朝鮮を知り平和を創る−

「朝鮮脅威論」の克服

 朝鮮西海での砲撃事件(11月23日)について、日本のメディアはあたかも朝鮮が一方的に砲撃を加えたかのように報じている。事件発生の背景と根本原因には触れようとしない。

 本書は、タイトルの通り、朝鮮半島がなぜ「戦争の危機」に陥っているのかを解説する。本書の発行日は12月1日。執筆自体は延坪島事件の前になるが、それでもこの問題が起きえた背景を知るに十分だ。

 本書は大きく2つのテーマで展開されている。一つは1990年から2010年にかけて、朝鮮半島をめぐる米・南・日政府の政策とそれに対する朝鮮の対応についての分析。もう一つは朝鮮を正しく理解するための、チュチェ思想に関する著者ならではの解説となっている。

 前者においては、朝米関係に多くの紙数が費やされている。

 93年の朝鮮のNPT(核拡散防止条約)脱退、94年のジュネーブ合意に始まり、ブッシュ、オバマ米政権の対朝鮮政策の本質を描き出すことで、朝鮮を取り巻く危機を演出し続けてきた張本人をあぶりだす。

 「対話路線」を掲げて誕生した米オバマ政権に対しても、その幻想にとらわれることはない。「オバマ政権の本質は帝国主義政権」だとしながら、米国に従えば平和の維持、安全を保障できるという「パックス・アメリカーナ(米国による平和)」を唱えているだけだと喝破する。

 著者は日本を席巻する「朝鮮脅威論」は虚構だと断じる。「脅威・異常の大宣伝の中で、多くの人々の朝鮮を見る目がゆがんで」しまい、朝鮮の「体制の暴力的崩壊を策し」ていることは「危険な戦争への方向」だと指摘する(まえがきより)。

 「韓国強制併合」から100年を迎えた今年、朝・日関係の正常化を実現するために、朝鮮への理解を深め、東アジアの平和創造に役立てたいという著者は、そのための課題として、「朝鮮脅威論あるいは朝鮮異常視をいかに克服していくのか」というテーマを指摘する。(鎌倉孝夫著、白峰社、2381円+税)(茂)

[朝鮮新報 2010.12.15]