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祖国−金南柱−

僕らの守らなければならない土地が
他国の軍隊の足の下にあるのなら
オモニ、いっそ僕はその下に敷かれて
踏みつけられるほど生き生きと芽吹く
青麦でありたいのです
晴天の霹靂、砲弾にも折れることなく
南北に口笛を吹き鳴らす
草笛でありたいのです
僕らの歩かなければならない道が
他国の兵士の足の下にあるのなら
いっそ僕はその下に踏まれて
九年の日照りにも枯れることのない
草の葉でありたいのです
その葉に月灯りを含んだ露を湛え
渇望の峠を超えて来る
ニムの唇を潤したいのです
僕らの結ぶべき愛が
他国の金の重みにあるのなら
その下敷きとなり
毬栗に傷つく、血の滲む乙女の谷ならば
その痛みに暮れる闇空の悲鳴ならば
本当にもう、本当にもう、村を去った
うちの姉さんの包丁でありたいのです 背中に突き刺さり 
奴儕の胸に突き刺さり血を流す
その昔の愛の武器−竹槍でありたいのです
僕らの守らなければならない土地が
白人軍隊の足の下にあり
僕らの歩かなければならない土地が
黒人兵士の足の下にあり
僕らの結ぶべき愛が
ドルに押し潰される重圧の下にあり
そして 僕らの歌うべき自由の歌が
奴儕の銃剣の下に息づく影ならば
オモニ、本当にもう僕は
青麦になりたいのです 
草の葉になりたいのです
風より先に 倒れもするけれど
風より先に 起き上がることもできる
オモニ、本当にもう、本当にもう、僕は
包丁になりたいのです
竹槍になりたいのです
銃弾より、砲弾より先に折れはしても
彼らより先に 
突き刺さることもできる−

※その昔の愛の武器=甲午農民戦争を指す

(金南柱詩集「我が刃、我が血」1987年・忍冬)

 キム・ナムジュ(1946〜94)

 詩人。全羅南道海南生まれ。68年全南大学英文科入学。「10月維新」に反対する学生運動に参加し、「国家保安法」違反で逮捕。74年「創作と批評」に「灰燼」など7編の詩を発表し登壇。80年「南朝鮮民族解放戦線事件」により懲役15年を言い渡され、服役中に処女詩集「鎮魂歌」を刊行。87年6月抗争後に釈放。詩集に「私の刃、私の血」「祖国はひとつだ」などがある。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2010.12.13]