〈本の紹介〉 日露戦争の真実 |
日露戦争の「失敗」明らかに 日本では、日露戦争を描いた歴史小説として司馬遼太郎の「坂の上の雲」が有名だ。司馬はこの作品で近代日本の「成功」事例の頂点として日露戦争を描き、アジア太平洋戦争を「失敗」事例として挙げている。 本書では、そのような二項対立的な見方を批判、日露戦争における日本軍の戦術、戦略を徹底的に検証して、「昭和」の戦争の無謀さや謀略性の原因が日露戦争そのものにあったことを論証する。 著者はまず、明治維新初期の日本政府が情報戦略において英国と緊密な関係にあったことに言及し、日本軍の軍備拡張の理由として国家指導者たちが「ロシア脅威論」に支配されていたことを挙げた。また、その背景には、インドを植民地下に置いて朝鮮半島および満州侵略を目論むイギリスとロシアとの対立があったと主張し、日本軍への情報と武器の提供者が英国であったことを明らかにした。一方、日露戦争の発端には、ロシアの南下を防ぐ防波堤としての朝鮮半島侵略、そして王后閔氏を虐殺し朝鮮における自国勢力、権益の維持を図ろうとした日本の意図があったことも見逃すことはできないと指摘している。 本書では、日本による「韓国併合」が日露戦争の失敗のはじまりであったと強調されている。 「失敗」の連続だった日露戦争の歴史的事実を覆い隠し、いまだに日露戦争=「成功」という認識が漂う日本社会に、真実を訴える一冊といえる。(山田朗著、高文研、TEL03・3295・3415、1400円+税)(尹梨奈) [朝鮮新報 2010.11.26] |