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劇団アランサムセの2010年度公演「夢の国さがして」 継続する差別に立ち向かう

夢と現実との狭間で葛藤するシーンを迫真の演技で表現

 劇団アランサムセの2010年度公演「夢の国さがして」が10月28〜31日に新宿タイニイアリスで上演された。4日間で約350人の観客が訪れた。94年の初演、03年の再演に続いて、今回で3回目の上演となった。

 劇は主人公玉香の「歌って踊れるホルモン屋てっちゃん」を舞台にして、ストーリーが展開されていく。

 劇中で話される台詞の中にこんな一節がある。

 「子どもが大人になる過程では夢と現実がぶつかり合って、結局夢が現実に食われてしまう」

 劇中、何度も繰り返される「夢」―それはまさに「真の祖国」の姿だった。

 南朝鮮で民主化闘争を行う学生や市民たちとの思いを共に異国の地で「夢」を追い続ける妹のミョンシルに対し、現実離れした妹の「夢」を批判する玉香。しかしその背景には…。

 もう一人の登場人物、「夢の国」への案内人と名乗る悪徳業者の田中。しかし彼もまた「夢さがし」を諦め、現実との狭間で葛藤し、挫折する一人だった。その心情は終盤のシーンに表れる。「お前の夢ってなんだよ。そんなのどこにあるんだよ」。

 今年は「韓国併合」から100年。日本の植民地支配下で、国を奪われ言葉も奪われた在日同胞をめぐる状況は、日本敗戦後の今もその差別構造に基本的に変化はない。3世、4世ら若い世代は、現在も続く日本の差別政策の中で、民族教育への新たな差別を持ち込んだ「高校無償化」問題と向きあい、各地で闘争を繰り広げている。

 本来ならする必要のない葛藤に苛まれながら、それでも「夢」を取り戻すために立ち上がる在日同胞の姿をエネルギッシュに描き、大きな拍手を浴びていた。(梨)

[朝鮮新報 2010.11.5]