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〈本の紹介〉 「王妃たちの朝鮮王朝」

后たちの「恨」、赤裸々に

 「中国の婦女子は文字を知っていたから、政に参加でき、国を誤らすこともあった。ところがわが東方(朝鮮)では婦女子は文字を知らないから、政に参与できなかった。これは実に幸いなことである」(世宗実録79巻〔世宗19年1437年11月12日〕)

 こんなショッキングな発言をしたとされるのが、ハングルを創製して、朝鮮文化にはかりしれない遺産と幸運をもたらしたといわれるわが尊敬する世宗大王なのである。

 著者によれば、世宗大王は女性や一般の常民たちが文字を知らない現実を残念に思い、ハングルを創製した朝鮮王朝最高の聖君として知られる。その王ですらこんな感想をもらすのなら、一般の男たちの意識はいったいどんなものだったのだろうか。

 朝鮮王朝時代の男尊女卑の封建的家制度の桎梏はあらゆる不平等を女性に強制した。男性中心の儒教イデオロギーのなかで、長い年月縛られ、蔑みを受けてきた女性自身も、人間以下の扱いに甘んじて耐えることが「美徳」だと思わされてきた。

 朝鮮王朝時代の女性のなかで、特権を最も享受していた王妃たちもこうした儒教的規範に縛られていた。いや、一般常民の女性よりもかえって多くの拘束と抑圧を強要されていたかもしれない。

 朝鮮王朝時代の女性は、階層別に、王妃たちをはじめとする王室の女性、両班官僚の夫人である貴族層、多くの農民(良民、常民)の女性、妓女、巫女、医女らの特殊層の女性、主人に隷属された奴婢を中心とする賎民の女性に区別できる。

 その階層によって女性たちの人生は少しずつ異なるものの、儒教的女性観から、その誰も自由ではありえなかった。なかでも、徹底して儒教的女性観を信奉しなければなかったのは王妃たちであったと、本書は全編を通じて訴えていく。

 朝鮮王朝時代の代表的な記録「朝鮮王朝実録」も、儒教的女性観によって王妃たちを評価している。

 しかし、彼女たちの人生は決して単純なものではなかった。王宮のなかで権力をめぐって男たちと政治的に争うこともあったし、同じ女性たちとつばぜり合いを演じるときもあった。それに敗れれば廃妃され、ときには賜死する無惨な運命に突き落とされる場合もあった。

 王朝末期に日本政府と日本軍の謀略によって、惨殺された王后閔氏の事件は、まさに朝鮮が国権を喪失し、日本の植民地に転落した暗黒の時代の先触れでもあった。

 本書が取り上げたのは、朝鮮王朝時代に追尊されたり冊封された王后44人のうち、史料が現存する王后28人。王后、王妃というきらびやかなイメージとはかけ離れた薄命で悲劇的な女性たちの生涯を鮮明に描き出した。

 家、家門の犠牲となって、過酷な儒教的規範・拘束に泣いた女性たち。気鋭の女性史家の手になる本書は、これまでの男性作家や研究者の思い込みや偏見を打ち破り、王妃たちの実像に迫り、彼女たちの積年の「恨」を赤裸々に描く。人間としての自我を奪われた彼女たちの記録は、現代に生きる女性たちに大きな示唆を与えてくれるだろう。(貞蘭著、金容権訳、日本評論社、TEL 03・3987・8621、4600円+税)(朴日粉)

[朝鮮新報 2010.10.29]