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〈こどもの本だな〉 読書の秋、子どもと一緒に絵本の世界へ!

朝鮮の民話、秋の風物詩、平和絵本など

 秋の夜長はゆったりと読書を楽しもう。

 今回紹介するのは、発明好きな男の子の物語と、朝鮮の被爆者問題を取り上げた平和絵本、楽しい民話、美しい秋の風物詩の4冊。

 ここで紹介する本は、一般書店のほか、コリアブックセンターでも注文できる。

 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03−6820−0111、FAX 03−3813−7522、Eメール=order@krbook.net。

「ノマはちいさな はつめいか」−健やかな子どもの成長願う

 「きょうはなにをつくろうかな?」

 みんなをあっと驚かせるような、かっこいいものを作りたい…。

 ノマはダンボールの箱を見ながら考えている。

 えんぴつで形をかいて、はさみで切りぬいて…。

 おかあさんと相談しながら、きかんしゃづくりに精を出す。

 この話は1930年代、朝鮮の童話作家ヒョン・ドクによって書かれたものだ。朝鮮が日本の植民地だった時代、彼は苦しい生活の中で50〜60編の短編小説や童話などを発表し脚光を浴びた。その中に40余編に及ぶノマを主人公にした連作がある。祖国を奪われた苦しい時代に、ヒョン・ドクはノマのように、自分を信じて、考えて、工夫して、健やかに生きる子どもに、民族の希望を託したのだろう。

 70年以上も前の話が、現代絵本として生き生きと美しくよみがえった作品だ。(講談社、TEL 03・5395・3625、1500円+税)

「やくそくのどんぐり」−平和の願い、一本の木に

 慶尚南道の北部、伽耶山のふもとに陜川という町がある。その高台の上に立つ「みんなの家」には被爆者たちが暮らしている。

 1945年8月6日−。

 広島市一帯は、太陽が爆発したような白い光に包まれたとたん、ものすごい風であらゆるものが吹き飛ばされた。米軍による原爆投下だった。

 絵本に登場する朝鮮人のスンギさんは実在の人物。「丸山医師」は詩人(ペンネーム・御庄博実)の顔も持つ広島共生病院の名誉院長だ。同氏は、先日発行された「朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー」にも「一本の樹に」という詩を寄せている。

 世界唯一の被爆国である日本で被爆したのは日本人だけではない。広島だけで5万人の朝鮮人が被爆、3万人が亡くなった。

 「韓国併合」から100年。絵本は、「みんなの家」の庭に育つどんぐりの木にまつわる物語を静かに描いている。(新日本出版社、TEL 03・3423・8402、1500円+税)

「あわ一つぶで よめをもらった わかもの」−ユーモラスな朝鮮の民話

 むかし、ある村に、のんきで気楽な若者がいた。

 春になり、土がしめってくると村人は田畑をたがやし、種をまくのにいそがしくなる。

 ところが、若者は庭にぱらぱらとあわをまくだけ。

 縁側にのんびり寝そべって昼寝ばかりしていた。

 秋になり、村人はよく実ったこくもつをどっさり取り入れる。しかし、のんきな若者は庭にあわが一つぶみのっただけ。

 「このあわ一つぶ持って、旅にでも出るか」とふろしき包みを肩にかけ旅に出た。

 さて、若者の旅路はどんなものだったか。

 あわ一つぶがねずみになり、ねこになり、犬になり、ろばになり、牛になり…。

 そして美しいお嫁さんになったと言ったら信じられるだろうか?

 ゆかいな朝鮮の民話に思わず顔がほころんでしまう。

 巻末にハングル原文が収録されている。(少年写真新聞社、TEL 03・3264・2624、1600円+税)

「おおいそがし、こいそがし」−美しい実りの原風景」

 山あいの村には、秋がひとあしはやくやってくる。

 じいちゃんはとうもろこしを干し、ばあちゃんはごまの実をとるのに、おおいそがし、こいそがし。

 絵本いっぱいに描かれたわらぶき屋根の木造家屋、庭に置かれた子どもが隠れることができるくらいの大きな甕。空にはたくさんのつばめが舞っている。

 色鉛筆でていねいに描かれた細密画がとても美しい。

 幼いマルは、おばあちゃんが庭一面にまっかなとうがらしを干そうと敷き詰めているかたわらで、いたずらにとうがらしをついばむにわとりを追い払うのにおおいそがしだ。朝鮮の片田舎の美しい秋の風景がぎっしりつまった一冊。

 鳥のさえずりや里山をいそがしそうに駆け回るりすたちの足音が間近に聞こえ、たわわに実った稲穂の香りや、朝鮮の秋の風物詩であるキムチづくりの香りがただよってくるようだ。(平凡社、TEL 03・3818・0874、1500円+税)

[朝鮮新報 2010.10.16]