川辺に薄紫の菖蒲の花が咲きます 山影のおりた川沿いを歩き 家路を行きます 川の水が 私の後を追いかけたり 流れる川の水を 私が追いかけたり 川の水と 並んで歩いたりもします 古い馴染みの道に埋まっている 私に気づいた小さな石ころたちが 目を開けて見上げています 私は蒼い暗がりの中に咲いている 菖蒲の花を摘みました 深い川水のような菖蒲、 私の唇にそっと触れ 私を世の中へと呼び出した 初めての唇のように涼しげな花、菖蒲。 野薔薇の茂みも あんなに白く咲きました
水に濡れた手を前掛けで拭きながら 貴方は花のように笑い 菖蒲の花を受け取ります 私、そして貴方
(金龍澤詩集「だから貴方」 06年4月・文学の村)
キム・リョンテク(1948年〜)
全羅北道任實生まれ。82年に「創批21人新作詩集『消えることなき松明で』」に「蟾津江1」などを発表し、登壇。金洙暎文学賞、素月詩文学賞を受賞。詩集「蟾津江」「晴れた日」「貴方、突き進む愛」「彼女の家」「木」「恋愛詩集」童詩集「豆よ、君は死んだ」「僕の糞、僕の飯」などがある。(選訳・金栞花)
[朝鮮新報 2010.10.12]