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〈本の紹介〉 豊臣・徳川時代と朝鮮

歴史を正そうとする気概

 本書の著者は「秀吉の朝鮮侵略と義兵闘争について」長い間、心血を注いできた在野の研究者。名古屋朝鮮史研究会会長、東海地方朝鮮通信使研究会代表として、近世日朝関係史研究をリードしてきた。

 2度にわたる朝鮮侵略を仕掛けた豊臣秀吉の死後、徳川家康が国交回復に努め、江戸時代には計12回の朝鮮通信使が日本を訪れた。その歴史を清算し、朝・日関係の未来を開いたその平和外交の精神は、現代にも大きな示唆を与えてくれるはずである。

 本書ではそのキーマンとなった朝鮮の高僧・松雲大師に光を当てながら壬辰戦争の義僧兵活動および戦間、戦後の朝・日交渉における松雲大師の海をまたぐ活躍をたどっている。一方、平和の時代の象徴として、朝鮮国王の主治医・許浚が編さんした医書「東医宝鑑」を入手した将軍・徳川吉宗の傾倒ぶりについても詳述している。吉宗が東医宝鑑や朝鮮の医療制度に強い畏敬の念を持っていたかが取り上げられている。

 ゆがめられた日朝関係史を正そうとする熱意と朝鮮民衆への温かいまなざしがひしひしと伝わってくる。(貫井正之著、4800円+税、明石書店、TEL 03・5818・1171)(粉)

[朝鮮新報 2010.9.28]