思い出してください 九九を覚えられず
先生に手のひらを叩かれて
男の子が涙を見せるなとまた叩かれて
パンパンに泣き腫らした目で
家への帰り道に雨に降られて
家では尻尾を振って駆け寄る
犬のパドゥギに蹴られて
いくら呼んでもオンマの返事はなくて
戸棚を開けても
古漬けの酸っぱい臭いのする
キムチしかなくて
しきりにお腹の音がグウグウ鳴って− 思い出してください とうとう9×9=81まで全部覚えて
先生が満足げにほほ笑んでくれた日を
隣の席の子の重い荷物を持ってあげた
僕の幼き男らしさを
消毒薬散布車に興奮して
となり村まで追い駆けて行った
雨上がりの翌日のあの道を
僕にあんなに叩かれながらも
いつも傍に寄ってきて手のひらをなめた
犬のパドゥギの眼差しを
暮れゆく小路で
両手にいっぱい僕の好物の太刀魚をさげて
僕を呼んだオンマの声を 思い出して下さい 泣いたあの日も
笑ったあの日も
すべて僕には大切な一日だった事を…
今日がとてもたくさん
落ち込んだ日だったのならば
あしたには
今日がとっても
大切な一日になるということを
かならず思い出してください ※オンマ=母の幼児語 (「心」2003年・ファニブックス) ウォンソン
17歳で出家し、狭川・海印寺で戒を受ける。海印講院を経て中央僧伽大学校で社会福祉学を専攻。清らかな童心の世界―童子僧を主題に絵を描き、NY、東京、上海、ミラノなど多くの国の招待を受け個展を開いた。著書の「風景」、「鏡」は絵に添えた文章が美しい調和を奏で、南朝鮮で多くの人々に愛され中国と台湾ではベストセラーとなった。38歳。(選訳・金栞花) [朝鮮新報
2010.8.31] |